はちみつ色の狼
13 ghost
「今日は、飲みすぎた・・・。」
4人の人間が、千鳥足のようにふらふらと歩いていく。
横には、長く続く塀。
後から、歩いていくのは女性で前をふらふらしているのは男性であろう。
女性達は口々に話をしながら歩き男性達は肩を組みながら歩く、何かのパーティの後なのか服装はしっかりとしている。
が、この場所には似合わない。言いえて妙な服装であると言ってもいい。
赤毛の女性にロングの金髪女性、二人はロングのしゃなりとしたまるで結婚式にでも出てきたような服装であり、男性達は黒のスーツを着用しているようで夜の闇に紛れ込んでいた。
この場所は、夜になると人通りも少ない場所である。
まだ、シルベウスの星流れの時間にも早いこの時間でも人っ子の姿は一人も見えない。
そんな寂しい場所に男女4人で来るのには訳があった。
シルベウスの大祭の星流れを町の明かりから離れた場所で見ることと、運がよければその余韻でうまくカップルになってしまおうと言う策略が男のほうにはあった。
廃工場の目の前は、それには丁度いい場所である。
町からも少しだけ離れ、光もそれほどない。
人がいないので、いいムードになっても申し分もない。
暖かな生温い風が吹いていく。
その風に後押しされるように、一人の女性が口を開く。
「この辺り、幽霊がでるらしいわよ・・・。」
「え?あなた信じるの?」
「・・・そ、そんなこともないけど。」
そういうと一人の女性が、視線を塀の向こうに見える工場の建物へと目を移す。
そこにあるのは、なんの変哲もない大きな灰色の建物である。
火事で焼け落ちたその建物は、月明かりにもかかわらず色は濃く、不気味な影を落としている。
まあ、星の流れるのが始まってしまえば、その薄気味悪い建物なんかは、気にもならないであろうが。
首を振り、その視線を目を前を歩く男性達へと向けると大きな声で呼び止める。
「ねぇ、飲み物もちゃんと持ってきた・・・・の・・・・?」
その語尾が薄れていく。
視線の先にある男性の丁度頭上にある窓辺に何かを発見した女性。
「・・・ちょっ?」
光る暗闇、赤い閃光。
その声とともに、残りの3人もそちらの方向へと視線を上げる。
そこには、同じように赤い閃光がそして数秒後に消える。その後に続いて白いふわりとした人影。
だが、それはすぐに消えてしまった。
その方向を眺めたまま、数分無言になる。
だれから口を開いたのかは解らないが、口々に呟きだす。
「・・・なんだ、あれ・・」
「みたか?」
「見たわ!!なんなのかしら・・。」
「・・・この工場で死んだ人間の幽霊が、」
「なぁに、馬鹿なことを・・・。」
そう言いつつも、顔を見回す4人。
そして、先ほど赤い閃光が走った場所へと、もう一度視線を移す。
そこには、もう光も白い影も何もない。
「・・・かえろうか?」
「そうね、少し冷えてきたしかえりましょうよ!」
「そうだな。」
「ええ。」
先ほどの酔いはどこへ消えてしまったのか、4人は震えを感じているのかそのうちの一人が小さく身震いをしながら元来た道へと引き返す。
それに続いて早足でみな帰っていくのであった。
残された廃工場は静かに聳え立つ。