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はちみつ色の狼

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俺は、ついてる!俺は、復活した!

それどころか、金髪のボインちゃんが補佐官として今日は働いてくれるのだ、このチャンスをモノにしないわけにはいかない。
が、しかし同時に2週間もすっかり女日照りでがっつきたくなる物だが、ここはぐっと堪えるべきでもかもしれない。
この軍に入ってからと言うもの、「軍人は、国が命なのだろう」とか、「こんな人だと思ってなかった。」や、「がっつかないでほしい。」と恋愛では振られることが多いジャン。
その結果達が、今日のジャンにストップをかける。
優しすぎるのがいけない、仕事が急に入ってデートが没になる、食べ物の趣味が合わないなど・・・、
殆どこれまで、振られる人生なのだ。



「・・・あのぉ・・。」

ジャンの不敵な笑みと言うか、ここ一番の爽やかな笑顔に当てられてか、顔を真っ赤にして照れている補佐官。
そんな様子に”この子、かわいいなぁ”と思いつつ首をかしげてもう一度、補佐官の顔を見るジャン。

「ん?」
「そんなに見つめられては困ります。少尉。」
「・・・・お、あ、すまんすまんっ!!!」

そうだ、いかんいかん!!!今は、がっついたらだめだ・・・。

そう、自分に言い聞かせて地図へと視線を滑らせて、再び目的地の方向へと歩みを進めるジャンと、補佐官。
何気に、この補佐官もジャンの事を少しは気にしてくれているのであろうか?
見つめて困ると言われれば脈があるような気もすると言う物だ。
だが、職場恋愛は上手く行くためしがない・・。

目の前にある大きな穴を見つけ自分は先に飛び越えて、何の気なしに手を差し出すジャンとそれにつかまる補佐官。
ありがとうございますと小さな声が聞こえ、暖かくふくよかな手が名残惜しそうに離されていく。

「穴すごいんですね。」
「・・ほんとだな。」

歩みを進めていくジャンと補佐官。
2人の行く先には、先程と同じような大きな穴が乱立している。
多分、工場火災かなんかの時に焼失、もしくは破壊された部分なのだろうか。
地図を見ながら先を歩き、気をつけるように促す。
なんとなく、無言になる2人。
コンクリートで出来た建物の壁は、真っ黒のすすで汚れており、2人で並んで歩けないこともないのだが多分、歩くとなると2人とも真っ黒にすす汚れるのは確実であろう。
何より、太陽が建物に隠れて足元が見えにくい事と、同じく足元にある大穴に注意をする必要からも2人は前と後ろでゆっくりと歩き続ける。

「・・・・少尉ってモテテルんですよ。」
「・・・は?」

急に来た予想ダニしなかった言葉。
振り返った途端に、ジャンは小さな穴に嵌る。

「おわっ、」
「少尉!」
「大丈夫・・・、だけど、なんて?」

自分の耳を疑うわけではないがそんな事初めていわれた。
自分の落ちた小さな穴から抜け出しながら、補佐官を見やる。
補佐官も同じく足を止めて、恥ずかしそうにジャンにこう言う。

「少尉って、私達女子の中で結構いい線なんです。」
「・・・へぇ・・・、嬉しいな。」

素直な飛び出る感想。そして、思わずその嬉しさが顔に出てしまう。
だが、いい線とはどういう線なのだろうか・・・。
補佐官はその疑問を感じ取ったのか、答えていく。

「・・・誠実そうで背も高いし、やさしいし。保健管理や、補佐官仲間の女の子とか。」

正直、うれしい。
彼女ができるのも、彼女に告白するのも、いつでも自分からだった自分が、どこかの誰かにほんの少数だとしても、そんな風に思われているなんて・・。
優しいと言うのは、今差し出した手を例にとってだろうか?その言葉を背に思わずにやけてしまう。

ゲットか?ゲットなのか?

どきどきと違う意味で高鳴る心臓。握る汗。
彼女の口が開かれる。

「でも、やっぱり私は垂れ目は駄目で・・。」
「・・・・た、たれめ」


持ち上げられて落とされた気分。
自分ではそうではないと思っていたが、面と向かって言われるとなんだかそこは短所なのか?と疑問が生まれる。
ボインで、金髪の女の子と、調子の良い事ばかり考えていたからこんな事になるのか・・・。
とほほと、思いながらも「そうなんだ」と、相槌を打ってまた歩き始める。
「人には、好みってありますよね」とにこりと笑顔で楽しそうに言う彼女に「そ、そうだね。」としか、言えないジャン。

垂れ目だからだめって言うのは、初めての否定だな・・。

悲しいと、がっくり肩を落としながら前方を眺めると、建物の切れ目にたどり着く。
次の建物は、地図通りに行くと、廃液用プールが屋上に付いた建物である。
空を見上げると見えてくる筈の太陽は消え去り、朝とは幾分違う雨雲のような雲が近づいてい来るのが見えた。
まるで今のジャンの気分を表したような気配の雲り空。

「雨でも・・・降るのかな・・・、」
「・・・・なんですか?」
「なんでもないよ・・、」

ジャンの声が聞き取れなかったのであろうか、別に垂れ目の人間に興味はないのか、補佐官は足元の穴に気を取られているのかうつむいていた。
上空のその雲のすぐ傍に見える大きな給水棟のようなプールが付いた建物。
が、その建物と建物の切れ目に小さな小屋状の建物がある。
建物には、施錠もなく扉を開けるとそこは小さなスペースで、倉庫のように利用されていたのか薬液がこぼれていた。
床は緑に染まり、そのすぐ傍にあるのは、大きなダクトが存在している。
換気用なのか、ダクトには金網で封印されている。

ジャンは、床のシミを避けながら中へと入っていく。
補佐官は、外の様子を確認してくると言うことで一緒に中には来なかった。
中は、外から見たよりもより一層狭く感じる。
置かれたものは、火事から逃れたのか黒く焼け焦げてはいないが、ところどころ錆付き、それが色をあせさせている。

手にした青写真にはその場所はなく、そこは、ジャンが見る限りでは新しい建物に見える。
この青写真は、聞く所によると5年ほど前のものだと言うことで、その後で急遽作った施設の一部なのかもしれないな。
そう考えながらも、こう言う場所は演習で実践練習で使えそうな逃げ場になると同じく考える。
そうこうしている内に、補佐官の彼女が中に顔だけ入れ覗き込んだ。

「何か、手伝うことありますか?」
「・・・そんじゃあ、ここ、照らしてくれるかぁ?」

補佐官は、自分の作業着の上部ポケットから手際よくライトを取り出すとジャンと向かい会うダクトの方向を明るく照らす。
ありがとうと言いながら、ダクトへと覗き込むと、ダクト上部の金網の一部分の螺子が思ったとおり錆付き、何個は取れかけていた。
これなら、開きそうだな・・。
ポケットの中に常備されているアーミーナイフを取り出すと、その螺子に押し当てまわす。
が、その螺子は余程錆がひどかったのか、簡単にダクトから取れて締まった。
右手で金網を確認しながら、左手でアーミーナイフを片付ける。

ダクトの奥は、通気口になっており地下のほうへと繋がっているんか、冷たい風がそこから流れてくる。
補佐官も頭を金網に引っ付けているジャンに習ってそこへと近づき、手元を照らしていく。
そんな彼女の仕事をみながら、ジャンは仕事とは関係のないことを考えてしまう。
作品名:はちみつ色の狼 作家名:山田中央