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はちみつ色の狼

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演習によっては、軽い軽量タイプの銃に、射撃用のスナイパー銃、マシンガンタイプの銃の用意もする必要があり、その用意をするのにも十分な時間を要する。
机の上に広げられた地図、場所は郊外の工場跡地、西部地区の軍が買い取った演習用の私有地である。
数年前に工場内部の小火騒ぎで使われなくなった工場跡にしては、起伏に富んだ場所で施設跡内には小高い丘や、浄水、下水施設、宿泊の施設まであったようである。
いうなれば、演習にはぴったりの場所である。


「・・・。」

だが、何か忘れているものがある・・・。

なんだ?

部屋の中で燻っているよりもその場を自分の目で見たほうが書類も進むかもしれない。
ジャンは、見ていた地図から視線を上げると遠くで自分を呼ぶ声がするのでその方向へと視線をやる。
視線の先は自分の背後にある窓で、誰もいないように見えたがぴょこと動く誰かの頭を見つけ、窓を開ける。
そこには、声の主ルイスがどこかで拾ってきた何かの箱を椅子にして座っていた。

「お、ジャン。」
「・・ルイス、何してんの」

そう、こいつは俺の唯一無二の親友。
ルイスは、書類の決済箱を片手でぷらぷらさせながら、煙草をぷかぷかすっている。
顔には、軍曹と同じような奇妙な笑顔と、鼻歌。

嫌な予感・・・。

「医務室の新しい医者みた?なんかつんけんしてそうだけど、美人なんだぜ!」

親友よ・・・。そこからかい・・・。
ジャンは、その一声でがくんと肩を落とす。
それと同時に思わず窓にかけていた手がすべり落ちそうになるが、それを堪える。

「・・お前、何して・・。」
「軍曹と一緒に、会議の帰りに医務室のチェックに行ってたんだよ。」
「・・・。」

ルイスはそんなジャンの反応なんかはお構い無しに話を進めていく。
へぇ・・・、それで帰ってくるのが遅かったわけですかと言いたいところだが、思っていた通りの出来事を口頭で言われ、怒りと言うよりも思わずあきれてしまう。
やはり、会議の仕事が終えたその足で、二人で医務室まで行ったのだ。

「ああ、はいはい。」

半ば、投げやりに反応するジャン。
それを聞いてルイスは何を勘違いしたのか、急になんだか企んだような顔をしてジャンの肩をポンポンと叩く。

「へぇ・・・。なあに?お前、もう知ってたわけぇ??まあ、ああいう系の男のセンセイは、軍隊受けすんだよなぁ。」
「・・・。」
「つうか、あのセンセイ・・・、俺あの事故の日見たような気がしてんの。」
「・・・そうだったか?」
「??・・・気のせいか?まあ、あんな美人ならこのルイスちゃんが忘れる訳もないけどね。」
「ははは・・。」
「だけど・・・、ジャン、残念ながら男だよ。ボインちゃんでも金髪でもないんだよ。」
「・・・はははは。」

そんな事、誰も聞いてねーよ・・。
乾いた笑い。だが、その表情はまったく笑ってはいない。

「・・・、・・・・。」

ボインでも金髪でもない、そんなことは解っているし、ついでに男だ。

ルイスの言葉が頭に響く。
そう、正直に思える自分がいる。それは、ジャンにとって嬉しいことであった。
あの時の感覚はただの気の迷いだと一人心に決めこんで、多少なりとも少しへこんでいた自分。
だが。今日でわかった。
朝から今までこんなに話題に上ったにも関わらず、何にも感じないのだ。
それも普段どおりの自分に戻ったようななんとも晴れ晴れとした気持ち。

そう、ジャン・シルバーマンは復活したのだ!!

これなら、なんとかやれそうかな。
ボインでも、金髪でも何でも来い!!このシルバーマンが相手だ!!!

何かまだ呟いているルイスの声はジャンの耳にはもう、届くことは無かった。



作品名:はちみつ色の狼 作家名:山田中央