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はちみつ色の狼

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出る物も出ない、それは多分この男と二人っきりだからと言う訳だけでもないが、ただ他の人間と二人っきりであったとしてなんかしにくい。


「・・・そんで大佐なのに、ここでは医者の仕事っすか??」

自分の気持ちを切り替える為にか、ジャンはトイレに座りながらもそこでまだボタンと格闘しているであろうジンに話しかける。

「大佐である前に、医者が本分だからな。」
「へえ・・・・。」
「意外だとでも、いいたそうだな??医者の資質が本分で軍隊に入ったのだからおまけなのは、大佐の方なんだよ。」

トイレから話しかけていたのにも関わらず律儀に応答してくれるジン。


「まあ、ここで俺が大佐であることを知ってるのはエレノアとお前くらいだからな、お前が静かにしていればいいことだ。」


ジャンは、目の前にあるトイレの扉を眺めながら考えていた。
そういえば、昨日出会った時もスーツで軍服を着用していたわけではない。
こんな美人で黒軍服を大佐のマークでもつけていればあっという間に、狭い東部地区兵舎である、噂が噂を呼び今日にはこの中の全員がこの”ジン・ソナーズ”が大佐であることは知るのは確実である。
昨日来たのもただの会議で、もしかすると医師としてこちらの医師達との連絡ミーティングか何かだったのかもしれない。
まあ自分は医者じゃないし想像でしか考えられないけどと思いつつ、この東部と中央の少佐や大佐、少尉クラスだって連絡ミーティングをするくらいだするのは珍しいことではなにのかもしれない。

「・・・でも、なんで秘密みたいにしたいんです?」
「大佐とか言う身分の医者に診られて緊張したいかい?診療所まできて・・・。」
「それは・・・・、嫌ですね。」

確かにと納得するが、すぐにまた疑問の波は押し寄せる。
が、小便の波は未だに来ない。

「でも、あんた・・、いやあなたは大佐ですよね。じゃあ、・・・」
「・・なんだ少尉、・・・金で口止めしないとだめなのか??」
「お金っ、別に喋んないですけど!」
「じゃあ、なんだ??」
「でも、こんな敬語とか喋ってたらばればれ何じゃ??」
「お前の敬語が、敬語かどうかは疑わしいが、」
「どうも、すんませんね。敬語らしくなくてっ・・・」
「だが、・・・お前の言うことも一理ある。敬語はよしてもらおう、この基地内では。」

うんうんと、軽く頷いて自分で納得をしている様子。
ジャンは、少しその微笑ましい様子を頭の中で勝手に想像して、苦笑をする。
なんだっとまた目つきの悪い視線がこちらへと向けられすぐに居心地が悪くなるのは眼に見えていたが、今はトイレの中である関係は無い。
この雰囲気嫌いじゃない・・・、むしろこの俺しかしらない秘密って言うのは良い気分かもしれない。
ジャンは、なんだかほくほくと嬉しい気持ちになってきた。

その間、数分の”ま”。

「・・大佐って仕事はともかくとして、医者って仕事は儲かるんですか?」
「・・・・・ぇ?あ?」
「ねえ、あんた、聞いてるんですか?」
「はあ?」

声の感じ違う?と首を捻るジャン。
やっとで用を足してから外へ出るとそこにはもう、ジンの姿はなくなって他の隊員がその場で用を足している姿が目に入る。
それは、なんだか今朝を思い起こさせる風景。


「・・・なぁんで、あの男は一言言って行く事をしねぇんだ!!!」


一人と、知らない人間と一緒に取り残されたジャンはもう叫ぶしかなかった。
叫ぶと同時に勢いよく蹴られるゴミ箱。ゴミ箱の中からいろんな物が飛び出してくる。
そして、知らない男は何か怒り狂ってる男を横目にこそこそと扉をすり抜けていくのである。

後に残されたジャンはそのゴミを一人黙々と片付けるのであった。






作品名:はちみつ色の狼 作家名:山田中央