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はちみつ色の狼

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小さな据え置き型のテレビと小さな冷蔵庫が備え付けられていること。
電気もつけずに部屋を横断し、隅にあるテレビを回しつける。
暗がりの中でぼんやりと火を灯す、テレビ。年代モノだからかテレビのチャンネルはすぐには合わず
焦点の狂った映像と音声を部屋の中へと運んでくる。
カーテンを開けるとそこには、ちらほらと灯る町の明かりが星のように視界へと写る。
今日も、町の人間広くは世界の人間の平和を守った。
大きくでたが、やはりこういう裏方の人間が仕事をしない限りは真の平和は訪れないのだ。

ジャンは、ベットのすぐ横にある簡易の冷蔵庫の中にある冷たく冷えたビールに手を伸ばそうと考えるが、その手をすぐさま引っ込めてシャワーを浴びることにした。
今日一日の、雑用と任務で薄汚れた身体をなんとかしたかったからだ。
腕を少し持ち上げ、自分の脇の匂いを嗅いで見ると、柄も言われないような臭さがある。
玄関の脇で下ろしたリュックも、今は鼻が麻痺しているのか匂わないが、明日の朝リラックスした時に匂うとなると怖い物がある。
とりあえず、床に脱ぎ捨てた今朝までは白かったはずのシャツと、同じく今朝までは新品同然だった青い色の作業着は、
どす黒い血の色のように変わっている。
テロの手助けでの仕事でこんなにとどめ色の色になってしまったお気に入りの作業着。
くすんと少し鼻をならして、これはまた支給して貰えたりするのだろうか?とそんなことを考える
ちょっと貧乏性な自分に悲しくなってしまう。

玄関のすぐ横の扉の中がシャワーである為、その場で服を脱ぎ着するというちょっと利便の悪さがあるのだが、
男一人の生活にそんなしょうもないことで文句も言ってられないとジャンはいつでもそう自分に言い聞かせていた。
彼女ができれば勝手は違うのであろうが、ここは男性独身寮女子禁制は言うまでも無い。
彼女ができればここを出て行ってどうにでもしろと言いたげなシステムだが、ここは軍そんなことを考えているほど甘くは無い。

まあ、しょうがないと振り切ってシャワーへと入り、勢い良くお湯を出すとくぐもって行く室内。
シャンプーというものはここには備え付けていない、自分の気に入っている石鹸を手に取り、泡立て
お湯でぬれた顔、頭身体へと擦り付けて洗って行く。石鹸の良い匂いが室内に広がりジャンの心を少しずつリラックスさせていく。


「はあぁぁ、きもちいいぃ。」


目を閉じながら、ざばざばと顔に掛かるシャワーのお湯を顔全体に浴びる。
温まった体と休まった心。ジャンは、シャワーと止めると目の前に備え付けられた大きな鏡に、映る自分の姿へと目をやる。
少し熱めのシャワーで曇ってはいる物の、自分自身が見ないほどでもない。
先ほどまで今日の任務で行った廃工場のオイルで薄汚れていた顔が血色を戻し、髪の毛は水滴によりぺったんこになっている。
今日一日で、朝に剃った髭は少しだけ伸び、見た目はいつもよりタフに見える。
自分で言うのもなんだが、顔は常人並で(ただ文句を言えばこのタレ目。だか、母にも隣人にもテレビのあの俳優に似ていると言われたこともある。)身長も190と人の数倍はでかいし、筋肉だってついている。
お腹だってビールは飲んではいるが、出ている訳でもないし、
まあ、少しだけ毛深いといえば毛深いが髪の毛と同じくはちみつ色に近いブロンドなのであまり見た目に悪いと言うわけでもないし、
他人と比べたわけではないが、大きな一物もデンと中心につき右に向くでもなし左に向くでもなく良い形をしいていると、自分では思う・・、
だが、この二週間そいつも使わずじまい。
彼女には、二週間前に激務でデートもろくにできない男には着いていけないと振られていた。


悲しい現実。



はちみつ色の髪を持つ、この牙さえあるかないのか解らない狼男は、寂しい人生を送る27歳男子である。




作品名:はちみつ色の狼 作家名:山田中央