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はちみつ色の狼

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5 coming back to sweet house.






基地に着いたのは、エバ中佐を乗せた科学捜査部隊のヘリが到着したすぐに後であったのだろうか、
ヘリコプターの翼からの風がそこら中の砂を飛びちらし、辺りは砂まみれ。
そして、もうすでに基地内部には、緊張感が充満し隊員たちが右往左往と動き回っていた。
推理すると、あの異様な色の遺体は、掘り起こされヘリに収容されここに運ばれてきたのだろう。

後門から厳重警備の施設へと入り込んだ車は、倉庫の手前で止められた。
隊員たちは、先のルイスの運転で慣れていたのか、今はすんなりと後部の座席から出てきていた。
ジャンもルイスと共に、車から出るとその騒がしそうな様子を背に受けながら、今日の作業で使用したが役に立たなかった機械とスコップを車から出し倉庫へと歩いていく。
後ろからは、同じようにルイスが今朝忘れかけていたゴーグルの入った箱を倉庫へと運び込んで行くべく、倉庫の前へと進む。
辺りは騒がしげだが、倉庫は静まり返っていた。
少尉以上が持つカードキーで開けられた薄暗い倉庫。
スコップのあった場所を探すのはさすがに一苦労である。
『立っている者は親でも使え』と言うことわざがあの偉そうな大佐様が来た東部にはあるらしいが、この西部にも同じようなことわざがあった。

「あ、ルイスさん電気お願いします。」
「・・・はいはい。」

ちょうど倉庫の入ったばかりで電気のスイッチに近いルイスにやんわりと伝える。
彼は、ゴーグルの箱を片手に持ち替えて、それとは違う手で入り口のすぐそばのボタンを押す。
すると倉庫裏に設置されているバッテリーからの唸り声のような音と共に、灯される電気。
今入ってきたばかりなのに、その場には、もうすでに白い煙のようなものが渦巻いていた。
床に落ちているほこりや、砂がジャンとルイスが入ってきたことで舞い散ったのだろう。
もしかしてここでまでゴーグルが必要か?と馬鹿な事を考えながら、場所を探す。
倉庫の中には色々なものが保管されており、スコップと探知機の類は棚の二列目の奥であった。
「そういえば、・・。」と言いながら苦笑をするルイス。
彼は、自分の持っているゴーグルの置き場を探しながら、その場でお構いなく話し続ける。

「今日のジャンは・・・・・っ、笑えたねぇ。」
「・・・なんで?」

思わずなんでと聞いてしまったが、理由は知れている。
砂漠からの帰り道のドライブでも、

「軍人で人の血を見るのには慣れてるくせに、あれはね・・・。」
「あの死体は、腐ってて緑で・・・。」
「遺体・・・でしょ?」
「あれは、ない・・・。」

と、こんな会話になっていた。もちろん、ジャンの事を考えて隊員たちには聞こえないように小声であったが。
それは兎も角として、ここまで笑い者にされるのも気に障る。
人には、一つくらい弱点があるもので、無いほうが逆に人間らしくも無い。
緑色をした血の人間に驚きを見せない人間の方がどうかしているし、スプラッタやホラー映画が好きな人間の方が世界中には少ないはずである。
俺は、ちっともおかしくなんか無いと自分に言い聞かせずにはいられない。
ここに入ってきた当初にあった任務で、爆発物の処理で亡くなった隊員の身体を集める作業をしていた際も、
これは人間じゃないと言い聞かせてやっていたが、最後の一瞬に指らしき物を見つけた際に貧血で倒れそうになった。
血生臭い戦闘が苦手なわけじゃない、ただもう原型を留めていない物がだめなだけだ。
逆に骨なら大丈夫なのに・・・とぶつぶつと言いながら、自分の手に持っていたスコップを本来の位置に戻す。

「・・・これは、どこに置いておきましょうか?」

いつからそこにいたのだろうか?
振り返るとそこには、今日一緒に遺体を発見したリードが立っていた。
他の隊員たちもそれぞれ使用したスコップに車の中に装備されていた救急箱や、他の機械類を持って立っている。
スコップの場所は目の前にあり、装備されていた物についても場所を指示をしていく。
ぶつぶつ言ってたのも聞かれたのではないか?とはらはらしたが、彼らは自分のことで一生懸命なのか、仕事をこなしていく。
早く終わらせて帰りたいなあと思いつつ、他の機械類を持っていこうとすると他の隊員と袖口がぶつかる。
あっごめんと言いつつ、そちらの方向を見ると恐縮しているリードの姿があった。

「あ、隊長!!すいません!!」
「・・・あ、おおお。ごめんごめん」

一言謝るが、彼はまだこちらに注目をしている。

「・・・?っ、なんだっけ?」
「我々はこの任務が終わり次第何を致しましょうか?」
「・・・・そうだな・・?」
「それ、考えて無かったよな。俺達・・・。」
「・・うん。」

ルイスが、同じタイミングでジャンのすぐ傍を通り、
二人は、素直に顔を見合す。


作品名:はちみつ色の狼 作家名:山田中央