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はちみつ色の狼

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ほっても、ほっても、砂。
掘っても掘っても、終わらない。
ほっても、ほっても、何も出てこない。





そういえば、自分が仕官時代には筋肉も何もついていなかったので、掘るのも一苦労。
何度も掘ることや、所謂雑用で筋肉を付けていたような思い出もあるなと懐かしさに浸るが・・・、
その思い出が現実の物になったのか、小一時間鉄くず発見装置を砂地に走らせたが、それと言う反応は全く無い。
たまに小さな反応を見せるが、その場所には死骸になった家畜の首輪に付けられたベルであったり、ジュースの缶のプルトップであったりとガラクタばかり。
すっと顔を上げると自分から3メートルほど離れたところにまだ青臭い若い隊員がスコップで砂を一生懸命になって掘っているのが目に映る。
真剣な顔でスコップを握り締めて、たまに自分の掘った砂が顔をかかっているようで頭は砂だらけになっていた。
彼も暑さに負けたのか、汚れることに負けたのか、軍の制服を上半身だけ脱いでシャツ一枚を腕まくりしていた。
ジャンは、苦笑を浮かべながらお〜いと手をひらひらさせてその隊員を呼ぶ。
それに気が付いた隊員は、自分が何かで呼び出されたのかと勘違いしてジャンの元へと走りより、目の前に敬礼しながら自分の名前を大きな声で言った。


「リード・ストック二等兵であります!」
「・・・・リード二等兵、別に特に用はないんだけど・・・、」
「・・・はあ。」

用はないと言われても、リードは真剣そのものの目でジャンをみやる。
何を言われるのか内心どきどきとしているのだろう。
たまにいる新人いじめの研修係りに出会った二等兵や、その先輩がこんな素直な新人に怖いことを吹き込んだに違いないが、
そういう噂はジャンが仕官時代には本当に起きていたのでだいたいは、本当と言うより仕方が無い。
未だに敬礼をし、姿勢を崩さないリードに少しだけ視線を送り呟く。


「自分で休憩とか決めてやんないと、しんどいぞ。」
「は、はい!!」


すぐに仕事を始めに掛かるリード、そんな彼を少しだけ眺めて自分も仕事を始める。
リードの持つ黒髪が、今日出合った偉そうな大佐様を思い出させる。
彼は長めの少し痛んだ黒髪だが、大佐は短い黒髪であった。
そして、こちらの黒髪の二等兵はもっと素直そうで良い奴みたいに見える。
同じ黒髪でも性格にはこんなに差があるのが不思議だと思うが、そういうジャンも執務室のエレノア大佐と同じく金髪であるが彼女は知性があり
こんなに砂まみれで体力を使うめんどくさい仕事は好まないし、だからこそ大佐になったのかもしれない。
リードの瞳は少し赤く、もしかすると彼の母親か父親も赤い目を持っているのかもしれないなと考えながら同時に、大佐は黒で・・・・・。
「??」
なんで、こんなことを考えているのだろうか?と自分で疑問に思う。
多分、目の前にいる素直で人の良さそうな顔のリードがあまりにも大佐と対極なので考えてしまうのかもしれない。
顔を少しだけ傾げながら、またすぐに装置を動かしに掛かる。

「・・シルバーマン少尉、少尉!」
「ああ・・?」

何度か、呼ばれていたのかリードは、すぐ近くで名前を呼んでいた。
考え事をしていたとは言え、至近距離で気がつかないなんてどうかしてるなと思いつつ、装置の手を止める。

「少尉はなんで、軍に入ったんですか?」
「へ??」
「なぜ、軍に?」

唐突に、こんなプライベートな質問が来るとは思ってなかったので、思わずゴーグルを外してリードの顔を覗き込んでしまう。
リードは至って真面目な表情で、こちらを向きいつのまに取ったのかゴーグルを首にかけてキラキラした視線を送っていた。

「ええ・・・っと、それはプライベートな質問なので、」
「・・・あ、そうですよね。すいません。少尉。」
「・・・・・・。」

しゅんとうな垂れてまたゴーグルを見に付けて穴を掘り始めるリード。
新人にとって自分の上司がなぜ軍に来たのかって言うのは、聞きたい質問なのかもしれないが、家庭の事情など聞いたところで別に興味はないであろうと勝手に思う。
多分、話をしようと頑張っているのはわかるのだけど、今は口よりも手を動かすのが先決である。


「シルバーマン少尉・・・。」
「ああ?」

もう一度、質問をされるのかと少しだけ身構えたように言い方が強張っていたのかリードはその声で少し怯えてしまう。
驚かせるつもりはないが、質問はするのは好きだが、されるのは面倒である。

「すまん・・・、何か用かな、リード二等兵?」
「あ、えっ・・・と、どうですか、そちらの方はと思いまして。」
「ああ、こっちはなんも反応ない・・ねぇ・・っ。でも、あっちはまだ・・・・・・ん??」


あっちと言って指差しながら見た先は、まだ誰もが作業をしていない場所である。
明らかに滑らかな何もない平面。
だが一箇所だけ先には何かが突き出たような部分。
平地がどこまでも続くこの辺の土地にしては、目立つようなこぶ一つ。
リードも同時に気がついたのか、お互いに視線をぶつからせる。


「あれ??」
「あれって・・・、もしかして?」



ウサギやネズミなんかの巣は、もっと水辺のオアシスに在るはずで、これはもしかするとビンゴであるかもしれない。
ジャンも、リードもそのこぶの方へと歩み寄り、何の疑問も無くスコップを突き立てる。
何かすぐにでも出てきそうな予感はあったのだが、その様子は軽く裏切られた。
数分ほどうまく砂を他のところへと避けながら掘り進んでいく二人。
こぶが出来ていたという事は、その場に何かありその部分に吹き溜まりのように砂と風が吹き付けてその形を形成させたと言うのが殆どなので、
その場にアンテナがありそうな雰囲気は満点である。
車のGPSは、大当たりだったのかもしれないなと、軽く考えながらもし、これが本当にアンテナなら恩を売って今夜の飲み賃をルイスから奪ってやろうと少し画策をする。
その場にスコップを突きたてたリードもそのこぶの下に何か感触を感じたのか、そのまま掘り進めようとするが一瞬堅いものにぶち当たりこちらを見る。

「・・・何かあるのは、間違いないな。」
「はいっ。」

止まった手を見てそう自然と言葉が漏れる。
リードも少し神妙な顔になりながら答える。

「アンテナだと、いいんだけどな。」
「はい。」

少し笑顔を浮かべるが、ゴーグルの下にある瞳はリードには見えない。
真面目な顔をしている彼の顔を見て少し苦笑を浮かべる。

「・・・お前っ、そんな怖い顔すんなって。身体に力はいりすぎ。」
「は、はい。」

彼の肩をぽんぽんと叩きながら、気分を和ます。
何て言ってもただの砂掘りの作業であり、重要は重要であるが、そこまで至急と言うわけでもないのだ。
ぼんやりと考えながらも、手を動かす。
砂を掘り出して、その砂を自分の後ろへと掘り投げる。
その作業を延々と続けていく二人。

そして、次の瞬間リードのスコップを持っていた手が凍り突いたように急に止まる。

「なに、どした?」
「・・・っ・・・!!!」

ひっと小さな声を出しスコップを放り出して後ろへ下がるリード。
それと同時くらいに風向きが急に変わり、ジャン達の方へと風が迫ってくる。
作品名:はちみつ色の狼 作家名:山田中央