【第六回 ・四】On泉
「この子は俺じゃなく京助 (強調)のガールフレンドなんだー (わざとらしく棒読み)」
「はっ!!!?;」
「ブプ------!!!」
坂田が言うと南と中島が吹き出した
その様子を見て緊那羅が慌てる
「何?なんなんだっちゃ?;」
畳に手をつき声を殺して笑っている南の肩を揺らして緊那羅がうろたえる
「坂田てめぇッ!;」
京助が坂田の肩を掴んで激しく揺すった
「ほー…やるなお前」
坂田爺が京助を見て感心したように言った
「あいらーヴゅー? へろー?」
坂田爺が緊那羅の手を握って話しかけている様子を婆がおいていった温泉饅頭を食いながら3馬鹿と京助が眺めている
「えっと…その…あの…京助~;」
ものすごく困った顔で緊那羅が京助に助けを求める
「つれねぇのぉ…冗談でもあいらヴゅーくらい言って欲しいもんだなや…やっぱ彼氏が一番ってか?」
ようやく開放された緊那羅がホッとした顔をする
「爺。話ってなんだ?」
一応一区切りついたっぽいカンジを見計らい坂田が坂田爺に聞いた
「おお!! そうだそうだ!! 深弦」
体の向きを緊那羅のほうから坂田のほうに変えて坂田爺がアグラをかきなおす
「転校する気ないね?」
「は?」
笑顔でさらっと言った坂田爺に坂田が一言返した
「お前まさかあのヘタレ男の跡継ぎになる気でいるのか?」
坂田爺が側にあったお茶を飲む
「俺はゆるさねぇからな。たった一人の孫を組長なんぞにさせてたまっか。お前はココを継ぐんだろ?」
【ココ】とはこの旅館のことだろう
「みのりが俺の反対押し切って正月町に出て行って早17年…俺はあの男を許したわけじゃァねぇ」
食べかけの温泉饅頭を手に持ったまま坂田が止まっている
「あんな組継ぐよりこの旅館継いだ方がお前のためだど?」
南と中島、京助と緊那羅が坂田を見た
「…坂田…?」
南が坂田に声を掛けた
「みのりって誰だっちゃ?」
緊那羅が京助に聞いた
「坂田のかあさん…この爺さんの娘」
京助が小声で緊那羅に返す
「文化祭の時にいた人だっちゃ?」
緊那羅も小声で再度聞く
「そー…」
京助がまた小声で返す
作品名:【第六回 ・四】On泉 作家名:島原あゆむ