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人間嫌いと教授の歌

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「だから……大切なんだ……な? な? な?」

 教授はふいに私の方を振り向いて言ってきた。でもこれもいつもの事。

「うん、よく分んないけど、世の中は全部7で出来てるんだよね?」
「そう、7。一週間は7。1日の半分は14。だから7。本当は14が半分なんだ。人が死ぬと49。ギャンブルだって7だ。7は悦楽だ。神様だって7だ。1日が7000年だ。7の1000倍。だから6033なんだ。分かるか? な? な? な? もうすぐなんだよ。もうすぐだ」
 
 分かるはずない。でも私は教授とこうして話している時が好きだった。膝にはマーヤだって乗っている。他人がどう思うかは知れないけれど、私は今――生まれてきてから一番幸せだ。

「1914……だろ? 606だろ? 4分の3だろ? 2520……だからやっぱり7だ! な? な? な?」
「うん、そうだね。7は神様なんだね」
「そうだ、な? な? な?」

 全然分からないけど、7は神様って言うと教授はいつもすっごく嬉しそうに笑うから。だから私の相槌はきまってそれだった。
 私の返事を聞いて、にやっと笑うと教授はまた木の枝で謎の数式を地面に掘り始める。

「神様、神様、神様、神様、神様」

 そんな風に言いながら。
作品名:人間嫌いと教授の歌 作家名:有馬音文