人間嫌いと教授の歌
「ねぇ、教授。今はそれ、何を計算してるの?」
「神様」
そう言うとボロをまとった教授は、地面に木の棒で数式を書き足していく。その速さは圧倒的で、数学どころか授業もまともに出ていなくて、勉強なんてまるで出来ない私はただ純粋に感心しながら見守っていた。
教授はいわゆる浮浪者のおじさんだ。でもいつも忙しそうに計算ばかりしているから、私は‘教授’って呼んでいる。ベンチに座りながら、ごくごく普通に浮浪者と会話する女子高生の私を、この辺りに住んでる主婦なんかが奇異の目で見てくるけど、そんなの関係ない。だって私の好きな人間は教授だけなんだもの。
私はいわゆる苛められっ子――っていうか‘ぼっち’。最近は苛めにすら合ってないもんね。完全な空気。誰も私を見ていない。だから学校に行かなくったって、誰も私を気になんて留めない。親だってそう、仕事で忙しい二人は私はちゃんと学校に通ってて、友達もいるって思ってる。馬鹿みたい。
私は人間が嫌い。人間なんて本当に最低。醜いったらありゃしない。誰が誰より綺麗とかカッコイイだの可愛いだの、頭がいいとか悪いとか、金持ちとか貧乏とか――そんな事だけじゃなくて目に見えない雰囲気にまでも優劣をつけて、喜んだり落ち込んだりしてる。ハッキリ言ってバカばっか。だからそんな奴らからハバにされるなんていうのは、むしろ誇りだ。
私はこの公園に住む野良猫達が好き。全部で3匹。クロとマーヤ、それにミル。全部私が名前を付けたの。ママが昼食代として渡してくる1000円で猫缶を買って、毎日学校をサボってはここで餌付けしてた。でもね、そしたら近所に住んでる主婦たちからクレームがきたの! 信じらんない。お腹空かせてる子が目の前にいるのに、やれ糞だの鳴き声だの臭いだのって、だから人間は嫌いなんだ。けっこう嫌味たらったらで言われまくったから、しばらくは自重しとくしかないかー? とか思いながら次の日ここを通ったらさ、教授が猫達に自分のパンをあげてたんだよね。私は凄く嬉しかった。それ以来、私は1000円で教授にコンビニでお弁当を買うようになったんだ。主婦たちはさ、得体の知れない浮浪者である教授が怖いみたいで、教授には何も言わないんだよね。あーあ、そういうトコ、ますます嫌い!
「神様」
そう言うとボロをまとった教授は、地面に木の棒で数式を書き足していく。その速さは圧倒的で、数学どころか授業もまともに出ていなくて、勉強なんてまるで出来ない私はただ純粋に感心しながら見守っていた。
教授はいわゆる浮浪者のおじさんだ。でもいつも忙しそうに計算ばかりしているから、私は‘教授’って呼んでいる。ベンチに座りながら、ごくごく普通に浮浪者と会話する女子高生の私を、この辺りに住んでる主婦なんかが奇異の目で見てくるけど、そんなの関係ない。だって私の好きな人間は教授だけなんだもの。
私はいわゆる苛められっ子――っていうか‘ぼっち’。最近は苛めにすら合ってないもんね。完全な空気。誰も私を見ていない。だから学校に行かなくったって、誰も私を気になんて留めない。親だってそう、仕事で忙しい二人は私はちゃんと学校に通ってて、友達もいるって思ってる。馬鹿みたい。
私は人間が嫌い。人間なんて本当に最低。醜いったらありゃしない。誰が誰より綺麗とかカッコイイだの可愛いだの、頭がいいとか悪いとか、金持ちとか貧乏とか――そんな事だけじゃなくて目に見えない雰囲気にまでも優劣をつけて、喜んだり落ち込んだりしてる。ハッキリ言ってバカばっか。だからそんな奴らからハバにされるなんていうのは、むしろ誇りだ。
私はこの公園に住む野良猫達が好き。全部で3匹。クロとマーヤ、それにミル。全部私が名前を付けたの。ママが昼食代として渡してくる1000円で猫缶を買って、毎日学校をサボってはここで餌付けしてた。でもね、そしたら近所に住んでる主婦たちからクレームがきたの! 信じらんない。お腹空かせてる子が目の前にいるのに、やれ糞だの鳴き声だの臭いだのって、だから人間は嫌いなんだ。けっこう嫌味たらったらで言われまくったから、しばらくは自重しとくしかないかー? とか思いながら次の日ここを通ったらさ、教授が猫達に自分のパンをあげてたんだよね。私は凄く嬉しかった。それ以来、私は1000円で教授にコンビニでお弁当を買うようになったんだ。主婦たちはさ、得体の知れない浮浪者である教授が怖いみたいで、教授には何も言わないんだよね。あーあ、そういうトコ、ますます嫌い!