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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第六回・参】大菓の改心

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「均等に分けろ均等にッ!!!」
「あッ!! テメ!! 今ツバつけたろッ!!」
「やかましいッ!!; 騒ぐなッ」
「スゲー!!手作りだってさ~」
休み時間が始まったと同時に窓際の席に黒い人だかりができた
「タイムバーゲンに群がる主婦みたい」
本間がソレを見て言う
「うめー!!」
しばらくしてその人だかりの山から歓声が上がった
「ぞりゃそうだ!ハルミさんの指導だしな! マズイとか抜かしたヤツはケリ飛ばすぞ!」
坂田の声が中心付近から聞こえる
「何? さっきのあの子京助関連なワケ?」
一人の男子生徒が京助に尋ねた
「悠の嫁。ねーお・に・い・さ・ま」
中島が京助の首に抱きついて言った
「そういや【義兄様】って言ってたナァ…子供生まれたらお前14にしておじさんか」
男子生徒が言う
「京助だって一緒にいた金パの子が彼女なんでねーの?」
ダンッ!!! ガン!!! バン!
大きな音がして群れていた男子他教室中が音の方向に目をやると教室の戸口を見ている本間がいた
「…なんでもないの」
ゆっくりと振り返った本間がにっこり笑顔で言った

「手作り無理だね」
保健室のベッドに腰掛けて保健医に手首に包帯を巻かれている阿部にミヨコが言った
「まったく…あんだけ力入れて机叩けば手首も捻挫するよ~」
ヤレヤレと溜息をつくミヨコに阿部が膨れる
「はい! お嬢様方!保健室ではお静かに」
保健医が包帯をテープで止めながら注意した
「…だって…はぁ」
阿部が包帯の巻かれた右手首をさすりながら大きな溜息をついた
「…勝ち目ないのかなァ」
そのまま阿部がベッドに倒れこんだ
「らしくない」
その阿部のスカートを本間が捲る
「…何してんのよ香奈」
女だけしかいないからなのか悲鳴も上げず阿部が小さく突っ込む
「宣戦布告してきたアンタどこにいったのさ」
本間が腰を下ろした
「だって…」
「弱音吐くのは当たって砕けた後でもできるでしょ」
パンッ! と小気味いい音を立てて阿部の尻を本間が叩いた
「当たらないと砕けもしないしね」
ミヨコも言う
「栄野も結構鈍感だしねぇ」
保健医が笑いながら言うと阿部とミヨコが驚いて保健医を見た
「何でゆうこちゃん知ってんの!?」
阿部が大きな声を出すと保健医ゆうこちゃんが人差し指で【シー】というジェスチャーをした
「何年女やってると思ってんの」
そう言って笑うゆうこちゃんを阿部がぽかんとしたまま見る
「別に決心がつかないなら焦らなくてもいいんじゃないかねぇ?取られたら取り返すって手もあることだし」
「うっわ大人の意見」
ゆうこちゃんが言うとミヨコが突っ込んだ
「恋ってそんなものだよ」
フフッとゆうこちゃんが笑う
「でも…」
阿部がまたベッドに顔をうずめた
「取り返せないような気がする…」
ゴロゴロと意味もなくベッドの上を転がる阿部の制服を掴んで本間が止める
「強敵?」
ゆうこちゃんがミヨコに聞く
「金髪で京助の家に一緒に住んでる」
ミヨコが答えた
「付き合ってるの?」
ゆうこちゃんがまた聞いた
「らしい…けど本人には聞いてないからわからないの」
ミヨコがまた答えた
「ならまず栄野に聞いてみたら?」
ゆうこちゃんがさらっと言った
「聞いてもちゃんとしたこと教えてくれないんだもん…」
阿部が天井を見上げて呟いた
「ねぇ…ゆうこちゃん…どうして人を好きになるのかなァ…」
ボソッと阿部が呟いた
「悩んで苦しくて怒ってさぁ…そこまでしてどうして好きなんだろう」
そう言った阿部の最後の方の言葉がどことなく震えている
「好きだからだろう? 好きだから好きになるんじゃないの?」
それに対してさらっと保健医ゆうこちゃんが返した
「好きなもの聞かれてどうして好きなのか理論的に説明できるやつの方が少ないんじゃないかな? …世の中白黒はっきりできないものの方が多いんだよ…四時間目はここにいなさい。香奈、連絡宜しくね」
ベッドのカーテンを閉めながら保健医ゆうこちゃんが本間に言った
「アンタ等まだ若いんだから」
ゆうこちゃんが苦笑いを浮かべて言った
「そういやゆうこちゃん…もうすぐよ…」
「はーいーチャイムなるよー」
ミヨコが言いかけた言葉をわざとらしくゆうこちゃんが遮った