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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第六回・参】大菓の改心

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「悠ちゃん…悠助のことそんなに好きになってくれてありがとう。母として凄く嬉しいわ」
本当に嬉しそうな微笑で母ハルミが言うと慧喜が顔を赤くした
「孫が楽しみだわ」
母ハルミが冗談っぽく言って笑うと緊那羅も笑った
「期待してて」
慧喜が笑って言った

「ヒマ子さんは京助にチョコあげるんだっちゃ?」
緊那羅がヒマ子に水を与えながら聞いた
「チョコ?」
与えられた水を吸収しながら真冬に咲く向日葵は首をかしげた
「何でも好きな人にチョコをあげて好きって言う日があるらしいんだっちゃ」
最後の一滴を鉢の中に入れた緊那羅がジョウロを置いた
「昨日ハルミママさんと慧喜が話してたんだっちゃ」
ザカザカと肥料を鉢の中に入れて緊那羅が言う
「…そう…そんな日があるんですの…」
しばらく黙ったあとヒマ子が何かを思いついてにやりと笑った
「緊那羅様はいかが致しますの?」
「私?」
ヒマ子に突然聞かれて緊那羅がきょとんとしたままヒマ子を見上げた
「京様にはあげないのですか?」
何かを確認するかのようにヒマ子が緊那羅に聞く
「私…は…」
手に肥料の袋を持ったまま緊那羅が考える
「…あげた方…いいのかな…」
ぼそっと緊那羅が呟く
「京助が喜ぶならあげたい な」
「やはり!!!」
ヒマ子の背後に突如嫉妬の炎が燃え上がった (様に思える)
「キィィィィッ!!! やはりお二人はッ!!」
ヒマ子がどこから取り出したのか白いハンカチを噛んで悔しがる
「…チョコ…」
鉢から肥料を溢れさせながら緊那羅が小さく言った

「…やっぱり手作りがいいのかなぁ…でもなぁ~…う~…」
スーパーのバレンタインコーナーで阿部はかれこれ数十分行ったり来たりをしている
「どうしよう…」
肩に掛けた鞄を握り締めて阿部が悩みに悩んでいる
「京助だけ…って…う~ん…;」
「義兄様がどうかしたのか?」
「!!!?; ッいやぁあああああああああああああッ!!!!!」
阿部の叫び声がスーパー中に響き渡った
「あ…阿部さん…?;」
鞄振り上げた阿部におそるおそる緊那羅が声を掛けた
「ラ…ラムちゃんと…慧喜…?;」
鞄を振り上げたまま阿部が言う
「あら阿部ちゃん? どうしたの大きな声出して」
買い物籠を持った母ハルミが後から来て阿部に声を掛けた
「あ…おばさん…;」
まだ鞄を振り上げたままの阿部が母ハルミに向かっていった
「…鞄おろせば?」
阿部が鞄を振り上げたのを避けてよろけて緊那羅に支えられていた慧喜がぶすっとして言う
「慧喜何かしたんだっちゃ?」
緊那羅が慧喜に聞く
「何もしてないよ! ただコイツがあに…」
「な--------ッ!!;」
慧喜が言いかけた言葉を阿部が大声を出してかき消した
「京助?」
「なんでもない!!; なんでもないのッ!!;」
両手を前に出してブンブンと振って阿部が言う
「ラムちゃん達こそ何買いに来たのッ?」
そして話題を変えようと阿部が聞いた
「チョコ」
慧喜が答えた
「バレンタインのね。阿部ちゃんもそうなんじゃないの? ずいぶん悩んでたみたいだから本命かしら?」
母ハルミがクスクス笑いながら言う
「ちっ…ちが…;」
顔を赤くして阿部が口ごもる
「とっ…父さんに! あげようかなぁ…なんて…;」
ハハッと笑いながら阿部が言った
「俺は悠助にあげる」
慧喜が言うと阿部が緊那羅を見た
「…ラムちゃんは?」
いきなり話題を振られて自分を指差したまま緊那羅が阿部を見ると阿部が頷いた
「私は…」
阿部が息を呑んで答えを待っている
「…京助」
阿部が止まった
「…と悠助とハルミママさんと迦楼羅と乾闥婆と…あと…」
次々に緊那羅の口からでてくる名前に阿部がぽかんとした
「ちょ…ちょっと待って待ってッ!!;」
阿部が待ったをかけた
「何だっちゃ?」
指を折りながら名前を言っていた緊那羅が阿部を見る
「本命はッ!! 本命!ほ・ん・め・いッ!;」
阿部が少し怒ったように言った
「本命って…何だっちゃ? バレンタインって好きな人にチョコあげるんだってハルミママさんがいってたっちゃ…だから…あ! 阿部さんにも…」
緊那羅が笑顔で言うと阿部がはぁと溜息をついた
「あのねぇ…;アタシが聞きたいのは本命は誰なのかってこと! 本命ってのは一番好きな人のことでッ!!」
阿部が怒ったように少し大きな声で説明する
「じゃぁ俺は悠助」
慧喜がまたも言う
「アンタには聞いてないッ! 誰!?」
慧喜に怒鳴ったあと緊那羅の方を向いた阿部が緊那羅ににじり寄る
「え…ぇえと…; そう言う阿部さんは誰が本命なんだっちゃ?;」
緊那羅に聞き返されて阿部が止まり一気に顔が赤くなった
「あ…アタシは…ッ!! アタシはいいのッ!! てかいまアタシが貴方に聞いてるんでしょッ!!」
赤い顔のまま阿部が怒鳴る
「まぁまぁ…若いわねぇ」
隣で製菓用のチョコをカゴに入れながら母ハルミが笑うと周りにいたおばさんや店員もクスクス笑っているのに阿部が気付き更に顔を赤くした