【第六回・参】大菓の改心
「…かえり」
茶の間の戸を開けると温かな空気とほんのり香るお茶の香りそして独特の話し方が京助達を出迎えた
「…何してんだお前等…」
「一服」
尋ねた京助に茶を一口飲んだ矜羯羅が答えた
「京助おかえりーみんないらっしゃい~」
「おかえり義兄様…あれ? ペチャパイ達もいんの?」
慧喜が奥の和室から顔を出した
「うるさいっ!」
阿部が慧喜に向って怒鳴る
「おじゃまします」
本間が部屋に入って戸を閉めた
本間の顔を見るなり膨れた慧喜が悠助を抱き上げる
「慧喜さん?」
抱き上げられた悠助が慧喜を見る
「アイツ俺より胸あるから嫌い」
慧喜がフンっと顔を振った
「あれ? 緊那羅は?」
ぐるり部屋を見て緊那羅の姿が見えないのを疑問に思った京助が悠助に聞くと阿部がピクっと反応した
「緊ちゃんはね~…」
「うっわ; …なんだか大人数だちゃね;」
タイミングよく部屋に入って来た緊那羅の手にはタオルが握られていた
「ヤッホ! ラムちゃん」
南が片手を上げる
「いらっしゃいだっちゃ。京助おかえりだっちゃ」
南に手を振り替えしながら緊那羅が言った
「何してたんだお前」
上着を脱ぎながら京助が聞く
「ん~…手洗ってたんだっちゃ。さっきまでお菓子作ってたから…」
緊那羅が手をヒラヒラ振りながら言うとどことなく甘い香りが漂っていることに気付く
「また作ってたのか?;」
京助が呆れ顔で聞いた
「またって…そんなに作ってるのラムちゃん?」
阿部が緊那羅に聞いた
「え…あ…でも殆ど矜羯羅が…」
チラっと緊那羅が矜羯羅に目を向けた
それに合わせるかの様に京助や3馬鹿の面々もゆっくりと湯気の立つ湯飲みを口につける矜羯羅に目をやった
「…食ったんか…?」
小さく京助が聞くと矜羯羅は湯飲みをテーブルに置いて小さく息を吐いた
「…あんだけの量をか?;」
「悪い?」
にっこりと笑みを向けて矜羯羅が言った
「京助の母さんが食べていいって言ったんだもの」
そういいながら矜羯羅は欠伸をしている制多の頭を叩いた
「一体どんだけの量だったんだ…?;」
南が顔を引きつらせながら苦笑いを浮かべる
「俺が朝見たときにはこんくらいのケーキ5つと…生チョコっぽいのが大量に…」
京助がジェスチャーも交えて説明すると呆れたような驚いたような顔で一同 矜羯羅を見る
「何さ」
少しムッとしたような声で矜羯羅が言った
「いえ。別に。何も」
3馬鹿と京助がハモって言う
「じゃあ何か? もうアレ…ハルミさんのチョコはないのか?;」
坂田が嘆く
「ハルミママさんのはないっちゃけど…ちょっと待っててっちゃ」
緊那羅が茶の間から出て小走りにどこかに向っていった
「少しくらい…残しておいてくれたってっ…」
床に手をついて坂田が激しく落ち込む
作品名:【第六回・参】大菓の改心 作家名:島原あゆむ