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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第六回・弐】感情性長期

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「…乾闥婆…; ワシの見せ場…」
迦楼羅が不満そうに言うと乾闥婆がにっこりと(怖い)笑顔を迦楼羅に向けた
「迦楼羅は京助達を御願いします」
乾闥婆は阿部を京助に受け渡すと慧喜に顔を向けた
「…ご近所にご迷惑かけない程度にな?;」
阿部を受け取りながら京助が乾闥婆に言った
「一応気をつけます」
京助の言葉に笑顔を返すと乾闥婆が足を前に進めた

「…栄野弟…」
迦楼羅が緊那羅に抱かれている悠助を覗き込んだ
「……」
しばらく無言で悠助を見た後迦楼羅が悠助の手を撫でその手を自分の額に付ける
「…もう沢山だ…」
誰にも聞こえないような小さな声で迦楼羅が呟いた
赤く腫れた目は今だ何を見ているのかわからないままの悠助を抱えたまま緊那羅が小さく歌いだした
阿部を抱えたまま京助も緊那羅に近づき悠助を覗き込む
心なしか緊那羅の周りの空気が暖かく感じられる
ゆっくりと悠助の頭を撫でながら悠助に語りかける様に緊那羅が歌う子守唄にも似た優しい歌
やっぱり何を歌っているのかわからないのだけれど何故か懐かしく何故か癒されるその歌

「ん…」
京助に抱えられていた阿部が小さく体を動かした
「阿部…?」
京助が阿部の名前を呼ぶと阿部がうっすらと目を開けた
「…きょう…すけ?」
京助を見上げて阿部が呟く
「…アタシ…」
頭の中がまだ整理できない阿部がボーっとしたまま何かを思い出そうとしている
「歌…?」
緊那羅の歌が聞こえ阿部が緊那羅を見る
「…! そうだ! アタ…!!!」
何か思い出したらしく京助にその思い出したことを言おうとして阿部が真っ赤になった
「な…降ろしてッ!;」
京助に抱えられていることに気付き阿部が怒鳴った
「ヘイヘイ;」
溜息をつきながら京助が阿部を降ろすと阿部が赤くなりながらもスカートの裾を直す
「…ありがと…重かったでしょ」
阿部がポソっと言った
「別に? ってかお前いい匂いするな~…香水とか付けてるのか? やっぱ」
京助が笑いながら言うと阿部が更に赤くなった

「お久しぶりです」
乾闥婆がにっこりと慧喜に笑顔を向けた
「こんなことをして…これは貴方の単独判断と…見られるのですが?」
乾闥婆のその言葉に慧喜がピクッと反応した
「…貴方達にとっても僕達にとっても【時】までは栄野兄弟という存在を傷つけるということはあってはならないはずなのですが?」
乾闥婆の周りの空気が変わる
「…あぁでも俺は知ったこっちゃない…あの方達の興味を惹いている、それが嫌なだけ」
慧喜が言う
「だからいらない」
そう言いながら地面を蹴り上げると慧喜が三又鈎を乾闥婆めがけて振り下ろした
「とんだ我侭ですね」
薄水色の布が宙を舞い電信柱の上に乾闥婆が着地した
「あいつ等がいなくなれば俺だけの方達に戻るんだ!」
体勢を立て直した慧喜が再び三又鈎を構え乾闥婆に向ける