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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第六回・弐】感情性長期

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「…俺アンタを殺そうとしてたんだって…知ってるの?」
慧喜(えき)が俯いて言うと悠助が慧喜の頬を両手で包んだ
「慧喜さんの大事な人達ってきょんがらさんとタカちゃんでしょ? …ごめんなさい…僕も京助や緊ちゃんやハルミママ…沙織ちゃんに取られて寂しかったから…だからごめんなさい…慧喜さんの大事な人とっちゃってごめんなさい…だからもう泣かないで?」
悠助の両手で包まれた慧喜の頬は濡れていてそれは大きな二つの目から流れたもので
「あのねあのね僕が泣いたときはね京助とか緊ちゃんとか…ずっと泣き止むまでこうしててくれるんだ…」
悠助が慧喜の頭を自分の小さな胸に抱き寄せてそれを撫で始めた
「慧喜さんが泣き止むまで僕が撫でるから…」
慧喜が頭を抱えられたまま手を動かし悠助の服を掴んだ
「僕は慧喜さんが好きだよ」
悠助の服を掴んでいる慧喜の手の力が少し強くなった
「…やっぱり…面白いよ…君達は」
矜羯羅がフッと笑って目溜まっていた笑い泣きの涙を拭った
「…うすけ…慧喜はね」
そう言いかけた制多迦の肩を矜羯羅が叩く
「…んがら…?」
制多迦が振り向くと矜羯羅がゆっくり首を横に振った
「…悠助がいるよ…これからは」
矜羯羅がそう言って悠助と慧喜を見ると制多迦(せいたか)も頷いて二人を見た

「…キス…か」
阿部がボソッと呟いて屋根の上を見た
「…好きな人…と」
人差し指で自分の唇をなぞりながら阿部は横目で京助を見た
「……やっだもうッ!」
しばらく何かを考えた後阿部が声を上げて雪を蹴り上げた
「…阿部?;」
京助に名前を呼ばれてハッとなって我に返った阿部に視線が集中する
「どっか痛いんか?」
「いや!ちが! キスが! じゃなくてあのね!;」
阿部が両手を【なんでもないなんでもない】と動かしながら言った
「あぁそういやお前 慧喜とキスしたんだって…覚えてるか?」
京助が思い出して笑いながら言った
「そうなんだ? ……はぁッ!?;」
阿部が声を上げると京助が吹き出し声もなく笑い出す
「うそ…」
阿部が驚きの表情で京助の胸倉をつかんでガクガクと揺する
「嘘!! マジで!? 本当に!?」
揺すられて頷いてるのかただガクガクしてるのかわからない京助は阿部の手を掴んで離そうとするが阿部のこの細い手には不釣合いな馬鹿力で揺すられ合えなく抵抗を諦めてされるがままになっている

「…決めた」
慧喜が悠助の服を更に強く握り顔を上げた
「慧喜さん?」
悠助がきょとんとして慧喜を見る
「俺悠助の子供産む」
慧喜がキッパリと言い切るとそれを聞いた一同が固まった
「…子供?」
悠助が首をかしげると慧喜が微笑みながら頷いた
「僕の?」
悠助が反対側に首をかしげながら慧喜に聞く
「そう。俺と悠助の子供、俺が産む」
慧喜が悠助の手を取って両手で包んだ
「いらないか?」
慧喜が悠助に聞くと悠助は少し考えたあと笑顔で慧喜の手を握り返した
「いる~僕 慧喜さんと僕の子供欲しい」
「待て待て待て待て;」
悠助の言葉に一同がそろって【待て待て】と突っ込んだ
「悠助…俺嬉しい」
周りの声が聞こえていないらしい慧喜がほんのり頬を染めて笑った
「だから…待ちなよ;」
矜羯羅が慧喜と悠助の手を縦割りチョップで離した
「矜羯羅様! 何…」
慧喜が矜羯羅に向かって怒鳴った
「順番飛ばし過ぎだよ慧喜…」
矜羯羅が溜息をつく
「第一悠助はまだこ…」
「てか生物学上無理じゃない! 男同士なんだからッ!!!」
矜羯羅の言葉を阿部の声がかき消した
「…男同士?」
慧喜と悠助が同時に呟いた
「男同士だと子供産めないの?」
悠助が阿部に向かって聞く
「誰と誰のこと言ってんの?」
慧喜も阿部に向かって聞く
「アンタと悠助のことよッ! ってか何でアタシがこんなこと言ってんのよッ馬鹿ッ!」
阿部が京助の胸倉をつかんだまま怒鳴る
「…知るか; ってか離せ;」
京助がボソッと言った