小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

【第六回・弐】感情性長期

INDEX|13ページ/18ページ|

次のページ前のページ
 

沈黙に次ぐ沈黙は独特の話し方で破られた

「…ぶない危ない;」
「タカちゃん重い~;」
京助と制多迦の間に挟まれている状態の悠助が声を上げる
京助の目に映った赤は阿部を抱えて後ろに倒れた制多迦の宝珠の赤だったらしく
「…ぇ?」
制多迦に抱えられ状況がわからずきょとんとしている阿部の目の前には後もう3センチ程で阿部の体に刺さっていたであろう三又鈎がキラリと光っている
「ひッ!」
ソレを見た阿部が小さく声を上げた
「阿部! 怪我無いか!?」
後ろから聞こえた京助の声に阿部が振り向いた
「きょう…すけ…」
「…っんの馬鹿ッ!」
無事な阿部の姿を見た京助が怒鳴ると阿部の眉が下がった
「だって…ッ…アタシだって…っ」
グスっと鼻を啜る音が聞こえ顔を上げた阿部はキッと京助を見ると
「…っだ;」
制多迦を押しのけて悠助ごと京助に抱きついた
「阿部ちゃん痛い~;」
またも板ばさみになった悠助が声を上げる
「…色々怖かったんだからッ!」
阿部はそう大声で言うと堰を切ったように泣き出した
「…ょうすけ泣かしたー」
三又鈎を杖代わりにして立ち上がった制多迦が京助を指差して責める
「るっさい!;」
ソレに対して京助が怒鳴った

「…制多迦…様…」
慧喜の言葉が震えた
「慧喜」
突如背後から名前を呼ばれた慧喜がピクっと反応する
「…何してるの?」
カチャリという音がした
「…だんまり?」
段々と近づいてくるその声に慧喜が小さく震えだした
「…こ…矜羯羅様…」
振り向いた慧喜の顔は嬉しさと怖さが混ざった様に見える
「…乾闥婆」
袖を再び布で止めている乾闥婆に矜羯羅が声を掛ける
「なんです?」
乾闥婆が淡白に返事した
「悪かったね」
矜羯羅小さく言うと乾闥婆はフイっと背中を向けて屋根から下りた
「…矜羯羅様…」
慧喜が矜羯羅をまっすぐ見る
「慧喜…」
矜羯羅の目つきが変わった
「何してたの?」
蛇に睨まれた蛙の様に動けなくなった慧喜の体が小刻みに震える
「…それなりの理由でしたことなんだろうけど…」
矜羯羅の顔に笑みはなく慧喜をほぼ睨むと同じようなカンジで見つめる

「…んがら怒ってるや…」
制多迦が屋根の上の矜羯羅を見上げて言った
「きょんがらさん何で怒ってるの?」
阿部と京助の間から抜け出てきた悠助が制多迦を見上げて聞いた
「…ょうすけと悠助をいじめたから?」
制多迦が悠助の頭を撫でながら言った
「違うよ! 慧喜さんは…僕…」
悠助が慧喜を見上げた
タッと走り出した悠助は慧喜と矜羯羅がいる屋根の家の下でピョンピョンジャンプし始めた
「…うすけ?;」
制多迦が悠助を呼ぶと悠助が不満たっぷりな表情で振り向いた
「…いくらなんでもそりゃ無理だ悠;」
京助が阿部の背中をさすりながら言うと悠助が迦楼羅と制多迦をジッと見た
「…登りたいのか? 栄野弟;」
迦楼羅が聞くと頬を膨らませたまま悠助が頷いた
「…仕方がないな;」
そう言うと迦楼羅は腕の中の緊那羅に目をやった
「私は…大丈夫…だっちゃ」
よろよろと迦楼羅の腕から身を起し緊那羅が苦笑いを浮かべた
「…くが行くから」
まだ大丈夫そうではない緊那羅を見て制多迦がそう言いながら悠助をひょいと抱き上げた
「…かまってて」
制多迦がトンと地面を蹴るとそこはもう屋根の上だった
「滑るからなー! 気をつけろよ悠ー!」
下から京助が叫んだ