小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

【第六回・弐】感情性長期

INDEX|11ページ/18ページ|

次のページ前のページ
 

「きん…」
「悠助!」
緊那羅(きんなら)の顔がぼやけて見える
「…きん…」
数回瞬きをして目をはっきりとさせた悠助は安心感からか泣きそうな緊那羅の顔を見た
「悠助…よかったっちゃぁ…」
思い切り緊那羅に抱きしめられた悠助の目に京助の背中が映る
「…京助…」
悠助が呼ぶと京助がピクっと反応した
「京助…」
もう一度京助を悠助が呼ぶ
「悠助…」
緊那羅が悠助を抱きしめていた腕を離した
「京助…」
もう一度呼ぶと京助がゆっくり振り向いた

迦楼羅の口元が笑った
「…もう大丈夫そうだな」
迦楼羅の前髪を掴んで何かを言おうとしていた乾闥婆の目が点になる
「いつものお前に戻ったな乾闥婆」
ポンと背中を軽く叩かれ乾闥婆が迦楼羅を見る
「…迦楼羅…」
小さく名前を呼ぶと迦楼羅はフッと笑って乾闥婆を屋根の上に降ろした
「…結局僕は…貴方に助けられてばっかりですね」
俯き唇を噛み締めた乾闥婆が慧喜に向かい合う
「…もういい?」
慧喜が電信柱の上に足を組んで座っていた
「ええ…お待たせしました」
乾闥婆が笑顔で言った

「悠助! 気がついたんだ!?」
阿部が嬉しそうに言った
「…京助…」
京助と顔をあわせるのが怖いのか悠助は俯いたまま京助の名前を繰り返す
「悠助」
緊那羅が悠助を呼んだ
「大丈夫だっちゃ」
どことなく疲れたような顔に優しい笑みを浮かべて緊那羅が言うと悠助は顔を上げた
「京助…僕…」
「ごめんな」
言葉を途中で遮られたのと思いもしなかった謝りの言葉に悠助がきょとんとする
「怖かったろ」
暖かくほんのり冬の外独特の香りがする手で両頬を包まれた
「ごめんな…悠」
眉を少し下げた笑顔で京助が再び謝ると悠助の顔が歪んだ
「ひっ…えっ…」
一呼吸目で鼻水が出て二呼吸目で涙が出てきた悠助は三呼吸目で京助に抱きついた
その反動で京助が地面に尻餅をつく
「早めに泣き止めよ? ケツ冷てぇから」
笑いながら京助が悠助の頭を撫でるのを見ていた緊那羅の体が傾いた
「ラムちゃん!?」
阿部が緊那羅の名前を叫ぶと同時にいつもの大きさに戻った迦楼羅が緊那羅を抱きとめた
「力の使いすぎだたわけ!」
青い顔をした緊那羅に迦楼羅が怒鳴った
「まだ宝珠に充分な蓄えがないというのに……」
緊那羅の右腕についている腕輪の宝珠はまだ透明に近い緑色だった
「…よく頑張ったな」
緊那羅の耳元で迦楼羅が囁いた
「娘! 何か羽織るものはないか?」
迦楼羅が阿部に聞く
「え…あ…ちょっと待って;」
突然指名された阿部が慌てて家に向かおうとする
「ほれよ」
その阿部に京助が自分の上着を放り投げた
「あ…」
栄野家の匂いのする京助の上着を受け取ると少し強く抱きしめた後阿部はそれを迦楼羅に渡した

「…心を直した…?」
悠助の泣き声で下を見た慧喜が信じられないという顔をする
「壊れた心を直した…まさか…」
動揺しまくりの慧喜が唇を噛んだ
「慧喜」
乾闥婆の声に慧喜がハッとして振り向く
「…何? 【人殺し】」
慧喜(えき)が再び声を変えて言葉を口にするが乾闥婆は笑顔のまま慧喜を見る
「だからなんです?」
乾闥婆が慧喜に近づく
「…っ…」
電信柱から隣の屋根に飛び移った慧喜を乾闥婆が追うように同じくと飛び移る
「…僕は確かに【人殺し】ですが…僕の名前は【乾闥婆】です」
そう強くまるで自分に言い聞かせるように言った後乾闥婆が袖を止めてある布に手をかけた