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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第六回・弐】感情性長期

INDEX|10ページ/18ページ|

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風鈴の音が聞こえた
足元には緑だけが妙に使い込まれたクレヨンが散乱している
そのクレヨンで落書いたのか開かれっぱなしの絵本にピカソもビックリな絵とも文字とも取れないもの
見覚えがあるその場所
「…ここ…僕の家…?」
悠助はゆっくりと歩き引き戸に手をかけた
「とーさん! 俺も抱きたい! だーきーたーいー!」
戸を開けると同時に聞こえてきた床をドタドタと踏み鳴らす音と声
「まだ京助にはむーり!首据わってからにしなさい」
続いて聞こえたのは笑い混じりの若い女性の声
「…ハルミ…ママ?」
悠助の頭をよぎったのは微笑みながら自分の頭をなで名前を呼んでくれる母ハルミの姿
「だーくーのー!」
さっきより力のこもった声がする
「じゃぁ座って抱くのよ? いい? こう…手を添えて…」
呆れた様子の母ハルミの声に悠助はゆっくりと足を進めた
そっと壁に手をつき覗くように顔を半分だけ出す
「悠助頭いい匂い~…」
縁側に面している和室から聞こえてくる声
「…僕と同じ名前?」
恐る恐る和室の中を見た悠助が見たもの
赤ちゃんを足の間に抱えるようにして座っている自分と同じくらいの少年と長い髪の女性、そして見たことがない男の姿
「悠助」
名前を呼ばれた
「…あれは…僕?」
悠助は無意識で手を男に向かって伸ばす
「ゆうすけ」
届きそうで届かないその手を懸命に伸ばす
不思議と足は動かせない
「ユウスケ」
「っ…お父さんッ」
どうしてか口に出た【お父さん】という言葉
すぐそこにいるのに届かない手
悠助の声に気付いたのか男は顔を上げた
逆光から顔は良く見えないがはっきりと聞こえた言葉

『ごめんな』

一瞬にして辺りが暗くなり誰もいなくなった

「…え…?」
突然のことに悠助はうろたえながら辺りを見渡す
トン…
少し後ろに下がった悠助の背中に何かが当たった
「…玉…?」
そこにあったのは大きな金色の玉
それに触ろうと悠助が手を伸ばそうとした時いきなりその玉が砕けた
「あ…」
目の前に広がる砕けた玉の欠片

『悠助…』

聞こえた聞き覚えのある声と聞いたことのある歌