アカツキに散る空花
ムラクモは少し寂しそうに目を伏せ、それからイツへ片手を振った。
「それじゃあイツ、そろそろ行くね。また会おう!」
「うん……それも約束じゃぞ、ムラクモ」
「よし、約束だ」
イツが言うと、ムラクモは力強く頷いた。
そしてその手に持った花束を掲げる。
「それじゃあ、それまでこれを部屋に飾っといてよ! いくよイツ!」
「……ん? いくとは……?」
「受け取ってっ!」
ふいにムラクモが花束をイツへ向かって放り投げる。
「え、わっ……!?」
何の準備も出来ていなかったイツはそれでもとっさに両腕を差し出した。
――が、致命的な運動音痴っぷりを発揮して胸元に飛び込んできたそれを弾き返す。
「「あ――」」
空高く跳ね上がる花束。それが風に吹かれて散り、色とりどりの花びらを舞い散らせる。
青空の下、その光景は目を奪われるほどに――幻想的だった。
「――綺麗だね」
「……そうじゃな」
二人の声を受けながら、舞い散った花びらは風に乗って空高くへ吸い込まれて行く。
それはまるで――。
平和を取り戻した暁を、――――神が祝福しているようだった。
完