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無題Ⅱ~神に愛された街~

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Episode.3 朝支度




朝。
いつも通り日が昇るより少し早くに起きた鬨は、身支度を整えようとベッドから立ち上がろうとして、隣のベッドに居る存在に少し驚いた。
そして、すぐに旅の「連れ」が出来た事を思い出し、安堵の息を吐く。
今までこの旅に連れが出来るなんて思っても見なかったのだ。本当に、人間どうなるかわからない。

静かとは言えない寝息を立てるヴェクサを目の端にとらえながら、枕元に置いてあった刀を手に取り、静かに抜き放った。
薄暗い部屋の中で鈍く光る刀は、見た目を裏切らず手にずっしりとした存在感を現していた。
武器は、手入れを怠るとすぐに駄目になってしまう。剣や刀の様な物の場合、錆や刃毀れは武器として致命傷だ。それは使い手にとっても命を危険にさらしていることになる。
だから、鬨は今まで武器の手入れを怠ったことはない。
街に居るより、街の外に居る事の方が多い鬨にとって、油断はしてはならないことだった。

腰の道具入れから布と小瓶を取り出すと、小瓶の中身の液体を布に少し含ませ、それで刀身を磨く。小瓶の中身は消毒液の様な物で、刀身についた錆の元となるものを拭きとってくれる。
本来ならもっと手間をかけて手入れをするべきだが、旅をしている身ではその道具がまた荷物となり、反対に邪魔となる。それに、自分ではどうもならない、という場合は武器屋に持っていけば事足りるのだ。

刀を磨き終われば、次は銃、短ナイフ、と持っている武器すべての手入れを手早くこなし、持ち物の確認をする。
腰にある道具入れは、主に武器が入っていて、それ以外は魔術を使う時に用いる触媒が少し入っている程度だ。
普段ならここに食料や飲料などの野宿する際必要な物や、その他の道具があるのだが、今日はない。それは「ミアチェ」に置いて来た。
丁度中身も古くなっていたから、後悔はしていないが、どことなく物足りない気がするのは、長い間使っていた物への執着だろうか。

「うぅ・・・・」

荷物を確認して元に戻し、すっかり身支度を整えたころ。
ようやくヴェクサが起き上った。

「起きたか」
「おぉ・・・おはようさン・・・」

未だ眠たそうにぼーっとしているヴェクサは、半目の状態で寝癖を頭に着けたまま起き上った。

「早く顔を洗って身支度を整えろ。朝飯が食えないぞ」
「おぅ・・・」

朝飯、という言葉にいくらか意識がしっかりとしたらしく、のそのそと洗面台に向かうヴェクサの後姿を見届けると、目線を正面に戻す。
その時、ふとヴェクサが着ていたコートが目に入った。
寝る際邪魔になるから脱いだのだろう。明らかに適当に掛けられた後のある上着は、すっかり汚れてしまっている。おそらく、地下を抜ける際にそうなってしまったのだろう。
それは、ヴェクサほどでないにしろ、鬨も同じことだった。

「これは、大きい買い物になりそうだな・・・」

まぁ、荷物持ちがいるからよしとしよう。
そう思いながらも、溜息は抑えられない鬨であった。

作品名:無題Ⅱ~神に愛された街~ 作家名:渡鳥