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無題Ⅱ~神に愛された街~

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「早かったわね。びっくりしちゃった」

そういうマリィだが、表情は「予想済み」であるかのように平然としたものだった。

「すまない、まだできてないか?」
「ふふん、鬨、私を誰だとお思い?この街一番の服職人よ?できていないわけがないじゃないの!」

自分で聞いて自分で答えたマリィだったが、ヴェクサはマリィが言葉の最後と共に目の前に取り出した服を見て、本人の自信満々な態度に納得をした。

「すげー、これ本当に1日で作ったのかよ?」
「当たり前よ!鬨の頼みだもの、張り切っちゃったー」

るんるんと口で言いだしそうなほど上機嫌のマリィは、全体的に白い布を基調とした方の服を鬨に、黒を基調とした方をヴェクサに差し出した。

「サイズはあってるはずよ。奥で着替えてらっしゃいな。・・・あ、元の服は要らないならそのまま置いとけばいいわよ。私が処分しておくから」

にっこりと笑って、マリィが店の奥を指差す。

「いつもすまない」
「あぁん、いいのよ!遠慮なんてしないで!」

「鬨と私の仲じゃないの!」そう言って鬨の背中をばしばし叩くマリィは、面倒見のいい姉の様だった。
仲がいいんだな・・・とそんな光景を見ながら微笑ましく見守っていたヴェクサに、鬨とマリィは不思議そうにお互い顔を見合わせて首をひねる。

「じゃあ、早速着替えようぜ!急ぐンだろ?」

疑問符を浮かべている二人に気付かず、ヴェクサがそんな声を上げる。

「・・・あぁ、そうだな」

不可解なことはあるものの、ヴェクサの言ったことも事実なので鬨も頷く。

「行ってらっしゃ〜い」

ニコニコとしながら手を振るマリィに見送られ、鬨とヴェクサは店の奥のカーテンで仕切られた部屋へと踏み込んだ。


作品名:無題Ⅱ~神に愛された街~ 作家名:渡鳥