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フリフリ星の宇宙人

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 大体、姿が見えないのに話をするなんて可能なのでしょうか。でも、現に会話は成立していたのです。
 そんなことを考えていた私は、ふと視線を感じて顔をあげました。すると、周りの人たちが私を見ていました。それだけなら気にすることもないのですが、その視線が少し冷たい気がするのは私の気のせいではないと思います。
「この冷たい視線は……?」
 訳のわからないまま、背中を冷や汗がつたいます。よく考えてみれば、当然かもしれません。これも文化の違いなのでしょう。
「すごいポジティブシンキングだな」
 うるさい紫村さんは無視します。とりあえず、帽子からペンと紙を出しました。私の見聞きしたことは、『フリフリ』内でも重要な情報源です。ちゃんとメモを取っておかないと、あとで叱られてしまいます。
「……あのさ、それって筆と巻物?」
「え? これはペンとメモです」
 ただでさえ資源の少ないフリフリ星では、このような文房具は貴重なものです。
「はああ!? おまえが変人だというのはわかってるけど、そこまでアナログ派だとは思わなかった……っていうか、墨とかないだろ?」
「だからペンだと言っています。墨は元から付いていました」
 懇切丁寧に教えているにも関わらず、彼の声は呆れたような気の抜けた声をしていました。「えー」だの「今時こんな奴がいたなんて」だの言っています。
 私は真面目にメモを取っていました。後になって考えてみたら、それが悪かったのかもしれません。いきなり、帽子を奪われました。
 私の帽子の中には、前も書いた通り、飴やペン、メモ、食糧などが入っていました。お金は、念のため服のポケットに小銭をいくつか入れている程度なので、奪われても良かったのですが……帽子だけは、譲れません!

 ここで、『フリフリ』内における帽子の重要性を説く必要がありますね。『フリフリ』(……私がもう耐えられなくなってきたので、以下『私の種族』)では、女性はスカートです。ズボンやジャージは邪道とされています。男性は何でもいいそうです。そこの辺り、かなり差別的ですよね。
 帽子はこれまた女性のみ。ちょうど私のような年の女の子は好んで可愛らしい帽子をかぶります。帽子は、私の種族の女性にとっては命以上に大切なものです。そういう理由から、私はなりふり構わず犯人を追うことにしたのです。いつも穏やかな微笑みを浮かべている私は、いなくなりました。「ほがああああっ」など何と言っているか理解不能の言葉をまき散らして、必死に走ります。宇宙人は、走るのが得意です。

作品名:フリフリ星の宇宙人 作家名:如月有樹