フリフリ星の宇宙人
その間何をしたか記憶が定かではないので、断片的に見たものと聞いたことだけを書いていきます。
ふと振り返って私の形相を見た時の犯人の悲鳴と恐怖に満ちた顔、周りの人たちの視線、「いきなり人が変わったな」と呟くケンヤの声、つかんだ犯人の腕、取り返した私の帽子、犯人の怒号、ケンヤの称賛。
犯人は、金髪の男の人でした。私の観察眼だと、年齢は二十一歳、職業はフリーター、身長は推定百七十センチ、体重はわかりませんが、おそらく血液型は……B型でしょう!
「なぜ私の帽子を盗ったのですか?」
「お、俺だっていろいろあったんだよ! その帽子をひったくれば、金はいくらでもやるからって……」
要領を得ない彼の説明から察するに、私の帽子を盗むように誰かから依頼されたようですね。
「こんな卑劣なことをするのは、『プリン』以外ありえません」
「いや、まだ何も証拠ないだろ。それに話の流れから考えて、『チラリズム』が第一候補なんじゃないのか?」
ケンヤから冷静なツッコミが入ります。勘違いしているようですが、私の種族は『チラリズム』とは仲良しです。お互いの悲しい境遇に、同情し合う形でしょうか。
そんな調子で、ケンヤというこの変な『幽霊』との日々が始まり、今日に至ります。
***
私は、その後長が予約してくれていた旅館の部屋でくつろいでいました。
「俺は充分その現場を見たから、おまえの恐ろしい面を嫌でも知ってる。でも、それとこれとは話が違うだろ」
「ふふっ、そんなつれないことを言わずに」
「……まあ、いいか。お前みたいな奴には、なかなか出会えないだろうし」
そういえば、すっかり忘れていましたが先輩に言われていたことがあります。それも、異常なほど強く念押しされました。
「私、この地球で知りたいことがもう一つあります」
「?」
絶対、それだけはやめておけ。先輩はいつになく必死なジェスチャーで言っていました。
「恋愛ってどうしたらできるんですか?」
聞いたのと同時に、彼のとても焦った様子が、姿が見えなくても伝わってきました。私も短期間で達者になったものです。
「宇宙人には教えてはいけないことっていうのがあるから教えない。お前だって、種族の秘密なんか地球人に教えたら怒られるだろ? それと一緒だよ」
無理矢理な理論で封じ込められたような気がします。ただ、考えてみました。私がもし種族のあれやこれやを地球人に軽々しく教えてしまったら……処罰はとても残酷で厳しいものです。考えただけで寒気がしてきました。
「すみませんでした」
「わかればいいんだよ」
私は、悪い人になりたいです。だから、これから『協力者』と共にいろいろな疑問を解決しながらその願いも叶えていきたいと思っています。
追記:いつか、長が代わるときがありましたら、どうかその方に種族の名前を変えていただきたいのですが、いかがでしょうか。