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【三題話】幸せは不幸を連れてやってくる

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「うー、寒ゥ……」
 慌てて残りの肉塊から作った制服を纏い、大きく息を吐く。
「ミチル、ご苦労様じゃったな。成長過程の子供龍とはいえ、聖龍をミンチに変えるとは、我が孫ながら先が楽しみじゃわい」
「校長センセ、いくらレッドカードと相殺やいうても、あの仕事はハードすぎたわ。ミコやんのファーストキスをいただいてもうたし……」
 ぺたりと地面に腰を下ろし、ミチルは額の汗をぬぐった。
「ウチはミコやんの力になれたから嬉しいけど、もっとやりようがあったと思うんやけどなぁ」
「そうかのう」
「あんな変化球みたいな曲がりくねったやりかたやなくて、もっと直球ストレートにズバァンと修行させればよかったやん。ミコやんのことや、ちゃんとエサを用意すれば、喜んで修行するで?」
 メガネを直しながら、ミチルが首を傾げた。
「ま、ウチは……この世界から去る前にミコやんの力になれて幸せやったけど」
 鳥居に背中を預け、星を見上げるミチル。さばさばとした表情に、寂しさが混じる。
「来年の一日が人間界の滞在期間リミットやから……いい思い出が出来たわ」
「何を言っとるんじゃ?」
「何って……神界の者が人間界にいられるのは2年間って決まりが……」
「そうじゃな。聖約を交わしていないものは、のう」
 ヒゲをいじりながら、達彦は言った。
 聖約。それは死が2人を分かつまで途切れない、聖獣と人が結ぶ絆の証。聖なる約束は、聖獣にとって命よりも価値があるものだ。
「だからウチは……」
「ミチルよ。破魔巫女と聖獣の聖約条件を知っておるか?」
「……ほへ?」
 首を傾げるミチル。
「聖約はのう、聖なる接吻。心を許した初めての口づけなのじゃ。心と体の両方を許した証が必要なのじゃよ」
「……はへ?」
 ミチルは思わず、自分の唇に指を当てた。
 聖約は、心を許した初めての口づけ……。
「……ひへ?」
 ミチルは息をのみ、そして……状況を理解した。
「へ、変化球を投げられたの、ミコやんだけやなくてウチもやったんかっっっ!」
「そうじゃ。そうでもせんと、聖約を結べんじゃろ?」
 あっけらかんとした顔で、達彦は断言した。
「確かにウチとミコやんはそんなエッチぃ関係やなかったけど……で、でも、それならウチやなくても……。次の聖獣でも……」