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【三題話】幸せは不幸を連れてやってくる

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 顔が真っ赤になっているのが、美琴本人にもはっきりと分かる。
 顔が熱く震えて、美琴の頭から湯気が上がる。
「あ、あたしも見てました……」
「それは嬉しいな。隣、座ってもいいかな?」
「ど、ど、どどどどど、どうぞっ」
「それではお言葉に甘えまして」
 春也はごく自然に、まるで普段からしているようにすんなりと、美琴の隣に腰を下ろす。だが、それを見ている美琴は、自然とは180度反対の方向の心境だった。
「あ、あ、あたしを見ていたのは……あたしが巫女だからですか?」
「逆だよ。ずっと君を見ていたせいで、巫女フェチだって思われてしまったんだ」
 ドキン! ドキン!
 心臓が爆発しそうになり、美琴はぎゅうっと胸元を握りしめる。
「あ、あ、あたしのせいですか? ご、ごめんなさい……でも、う、うれしいにゃ」
 胸がドキドキして、ろれつが回らない。美琴は、春也の顔を見ることが出来ず、無意識のうちに巫女装束の縫い目を何度もひっかいた。
「どんなことだって、君に嬉しいといって貰えたら、僕も嬉しいよ」
 春也はすうっと手を伸ばし、美琴のあごに指を当てて持ち上げた。そして、くいっと美琴の顔を自分の顔のそばに近づける。
 春也と美琴の唇の距離は、数センチにまで近づいた。
「せ、せせせ、先輩?」
「なんだい? 美琴君」
「ち、ち、ちちち……近づきすぎです!」
「いやなのかい?」
 じっと春也に見つめられ、美琴の顔が真っ赤に染まる。
「い、いやじゃないです……」
「じゃ、目、閉じてくれる?」
「ひぇぇぇ……は、はははは……はい」
 心臓が破裂しそうなほど、胸が高まる。
 それがどういう意味なのか、美琴にも分かる。
 初めてのキスは春也と……そんな想像をしたことはあるけれど、それが現実になると思ってもいなかった。こんな幸運が自分に訪れるなんてこと。
 ゆっくりと瞳を閉じる美琴。彼女の唇に温かい圧力が掛かる。
 唇から伝わる体温、ほんのかすかに流れてほおをくすぐる春也の息。ふさふさとしたヒゲ。
……ヒゲ!?
 慌てて目を開けた美琴の前にいたのは『龍』だった。
「さすがは破魔巫女。唇だけで幻影の術を……」
 ぐわしゃっ!
 美琴のバットが火を噴いた。
「さ、最後まで言わせ……」
 ぐわしゃっ! ぐしゃぁぁっ!