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【三題話】幸せは不幸を連れてやってくる

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「ふ〜う。あたしはこの衣装を着られるだけでいいんだけどなぁ。春也君、巫女が好きっていう話だから……」
 手に持った玉串を棚に戻し、部屋の片隅に飾ってあるバットを手に持った。春也君オークションに参加した時に、貯めていたお年玉をはたいて買ったものだ。
「修行はイヤだけど、巫女装束を着れないんじゃ仕方ないもんねぇ。名前も憶えて貰えてもらえてないあたしにとって、これが最高の切り札なんだもん」
 パンパンと手をはたき、バットの真ん中をを肩にのせて更衣室を出る美琴。
 目の前に……達彦の顔があった。
「お、おぅ、遅いから何があったかと思ったぞい」
「デバガメはやめろっっって言ったでしょぉぉぉがっっっっ!!!」
 バコォォォッ!
 美琴のバットが火を噴き、達彦は一〇分ほど『お星様』になった。

 ■ ■

「まったく、油断も隙もありゃしないわよ」
 溜まったうっぷんを払おうと、美琴は日が落ちて暗くなった境内でぶんぶんとバットを振った。
「えーいっ! ピッチャー振りかぶって、達彦を投げましたぁ! バッター美琴、強烈なスウィング! その頭を捕らえて、ホームラン!」
 かけ声と共に、ブンブンとバットを振り続けた。
 ……30分経過。一個大隊ほどの達彦の頭を妄想内で砕き、美琴は境内にすとんと腰を下ろした。
「ふーっ! あー、すっきりしたぁ!」
 んーーっ、と背を伸ばし、額に浮かんだ汗をぬぐう。
 パチパチパチ、と鳥居の方から拍手が聞こえてきた。
「だ、誰?」
「いや……野球に興味がある巫女さんがいるなんて、思ってもいなかったよ」
 近づいてくる足音に対し、美琴はバットを持って見構えた。
「おいおい、バットはそういうコトに使うものじゃないよ?」
 月明かりが男を照らす。野球部のユニフォームと帽子、そして流れるような髪が現れた。
「春也先輩!?」
「名前、憶えてくれていたんだ」
「あ、あたりまえです! ……我が校で先輩の名前を知らない人はいません……」
「うれしいね、美琴君」
 どきーーーーん!
 美琴の鼓動が、一気に加速し始める。
「どっ、どっ、どうして……あたしの名前を!?」
「前に勝利祈願で来たときに、君のことを知ったんだ。話しかける機会はなかったけど、ずっと君を見ていたんだよ」
「う、うそ……」