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【三題話】幸せは不幸を連れてやってくる

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「あ、いや、何でもないんや。……たいしたことやないさかい」
 少し黙り込んだ後、ミチルは急に元気になり、鞄を小脇に抱えてくるりと回った。
「ほな、ウチは家に戻るんで、連絡まっとりまする〜! ほんじゃ、ミコやん、まったね〜」
 びしっと敬礼すると、ミチルはいそいそと立ち去っていった。
「なんだか、エセ関西人度がアップしとるのぅ」
 ゲシッ!
「……エセでもなんでもいいでしょ! ミチルはミチルなんだから。あたしの友達を悪く言わないで頂戴!」
「あいたたた……オマエがそう言うならワシもかまわん」
「なんであたしが言ったらいいのよ」
「なんとなくじゃ」
 ケリで歪んだ顔を指でグニャグニャと修正しつつ、達彦は言い切った。
「それはともかく、交換条件は分かっておるようじゃの?」
「巫女としての修行をすればいいんでしょ。まったく、なんだかんだと理由を付けて修行させようとするの、やめてよね」
「巫女ではない、破魔巫女じゃ!」
「語呂が悪いから、嫌いなの!」
 達彦と顔をつきあわせながら、美琴ははっきり宣言した。
「何を言うか! 我が軽井沢家は代々退魔業を営んでおるんじゃ!」
「だからって、あたしがそれをつぐ必要はないじゃない!」
「何を言うか! オマエがウチで一番素養を持っておるんじゃ! そろそろオマエにも覚醒して貰わないと困るんじゃ」
 何故か胸を張り、達彦が言う。
「いやよっ! 世襲制反対〜〜〜〜〜!」
「そんなことを言っていいのか? 巫女装束でなければ、春也君にアピール出来んのではないか?」
「それはそうだけど……って、どうして知ってるのよ!」
「式神は便利じゃぞ?」
 達彦は、鳥の姿の式神を符に戻した。
「あーっ! デバガメすんなってあれほど言ったのにいっ!」
 ドゲシッ!! ドゲシッ!! も一つ、ドゲシッ!! さらにドゲシッ!!
 ゴミクズのように地面に倒れる達彦を無視し、美琴は神社の更衣室に向かった。
 
第2章

 するすると制服を脱ぎ捨て、美琴は下着姿になった。
 そして自然な動作で、透き通る雪のような白さをたたえた肢体に、巫女装束を纏っていく。
 ばさりと髪を振り払った瞬間、美琴は巫女になった。