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【三題話】幸せは不幸を連れてやってくる

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「でもまあ、ミチルがくれたあの情報には感謝しないとね。上手くいったら、今までのこと、ぜーんぶチャラにしてあげる」
「あの情報って、何やっけ?」
「んもう。……春也君の好きな物情報のことよ」
 ほおを赤らめ、美琴が目を伏せる。
「ああ、せやったなぁ。マクド1回でチャラになるような重大情報を提供したんやった。すっかり忘れとったわ」
 やれやれと肩をすくめ、ミチルは美琴の隣に並ぶように背を鳥居に預けた。
「野球部のエースで4番! 美琴のあこがれの人が実は巫女が好き! なぁんて情報、……ハンバーガー1個の価値しかないもんなぁ」
「そ、そんなことないよ。そんなことないって……」
 慌てて、手をバタバタ振る美琴。背中を預けた鳥居が、ミシミシといやな音を立てる。
「おい、そんなところにもたれるんじゃない! 折れるぞい!」
 突然響いた怒声に、ミチルは慌てて背を離した。
「ひぇぇ! って、あれ? 校長センセやんか?」
「ここでは宮司じゃ」
 白髪の老人が、少し不満げにヒゲをつまんでみせる。
「じいちゃん……」
「美琴まで、なんじゃ! ここでは宮司じゃと言うとるじゃろうに!」
 女子高生のように唇をとがらせ、軽井沢達彦はぷいっと顔を背けた。
「それはちょうど良かった。実は私、宮司のじいちゃんに用があるのよ」
「用事とは何じゃ?」
「アルバイト代のアップと、この敷地外への巫女装束での外出許可!」
「却下じゃ!」
 すぱぁんと、達彦は切って捨てた。
「お前等、それどころじゃないぞい」
「お前等って……ウチも?」
 ミチルが、慌てて自分を指さす。
「そうじゃ、2人揃って赤点2つ。このままじゃと累積警告でレッドカードじゃ。ま、おとなしく休み中補習じゃな」
 達彦は黄色いカード4枚と、紅いカードを2枚取り出した。
 それは、ワールドカップでサッカーファンになった達彦が校則に導入した、ミーハーな落第システム用カードだった。1学期に2枚黄色い落第警告カードを受けるか、通年で3枚の警告を受けるとレッドカードを受けた生徒は、補習で埋め合わせをしないと退場(落第)になる。
 わかりやすく受けは良いが、受け取る生徒が憂鬱になることに変わりはない。
「え〜っ! だまし討ちだよぉ! もう! 今は宮司じゃなかったの!?」