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【三題話】幸せは不幸を連れてやってくる

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 そういった途端、自分の大胆な発言に、美琴の顔が紅くなる。
 鏡野春也。野球部を甲子園に導いた、エースで4番。そして学園で1番の美形。「そりゃ、ミコやんちじゃ無理やろ。かき入れ時やし。ていうかそれ以前に、まだ告ってへんのやろ?」
「……う、うん。だって、まだ、あの情報を生かすタイミングが……」
 告白どころか、美琴は憧れているだけで、話したことすらなかった。美琴にとって春也は、遙か上空を突き抜けて成層圏に達するぐらい、雲の上の存在だった。
「なら、そんな話より、今はゼニの話や! ほな、いこか」
「もー、1分くらい夢を見させてくれてもいいじゃない」
 ぷくりとほおをふくらませ、美琴は唇をとがらせた。
「何いうてんねん! 時は金なり、や。1分でも無駄にしたらあかんで!」
「じゃあ、せめて30秒ぉ……うわぁっっっ!」
 ミチルに腕を取られ、美琴は全速力で三笠学園を後にした。

 ■ ■
 
 いつもの通学路を駆け抜け、いっきに裏山へと続く路地へと向かう。
 紅葉の名残を残した木々が美琴とミチルを出迎え、枯れ散った葉が2人に踏みしめられて悲鳴を上げる。
 2人の吐く息が白い軌跡を残し、そして消えていく。
「ちょ、ちょっと……ま、まって……」
 美琴の肺が破裂する寸前、2人は目的地に到着した。
 あけぼの神社。美琴の祖父が宮司を務める由緒正しい(らしい)神社。古ぼけたという言葉のほうが似合いそうな、色あせた雰囲気を持っている。
「はぁっ、はぁっ……」
 美琴は鳥居に背を預け、大きく肩を上下させて息を整えようと努力した。
「なんや、ミコやん、ずいぶんひ弱やなぁ」
「み、ミチルが頑丈すぎるのよぅ。な、なんであれだけ……全速で走って、息切れしない……のよっ」
「お金がからんでるときは、ウチは無敵やねん(笑)」
 歯を見せてにっこり笑い、ミチルは親指を立てた。
「ああ、そうだったわね……忘れてたわ。さんざんひどい目に遭ったってのに」
「ひどい言いぐさやなぁ。色々ええ目にも遭わせたったのに」
「どこがよ……」
 大きくため息をつき、走馬燈のようにグルグル脳裏を走り抜ける悪夢の群れを追い払う美琴。たった二年のつきあいなのに、数年分の苦労をかけられたような気がする。