【三題話】幸せは不幸を連れてやってくる
第1章
ばぁん!!
「やったぁ! これで誰にはばかることなく冬休みよぅ!」
終業式のホームルームが終わった瞬間、軽井沢美琴は力一杯机を叩いた。
その勢いで艶やかなロングヘアが揺れ、少し上気した白いほおを何度も撫でる。
「あー、この開放感を感じるたび、私は学生なんだなーって思うのよねぇ」
ぐるんと頭を回し、美琴は帰り支度を始めたクラスメイトたちを見た。みんな一様にうきうきしながら、雑談に花を咲かせている。
そんな美琴の視線に気づき、親友のミチルが近づいてきた。
「ミコやん、どう? マクドでも行かへん?」
かなり関東のイントネーションが混じった関西弁で、ミチルが話しかけてくる。
三つ編みに分厚いメガネという出で立ちは、美琴がイメージしている関西人に近い。あと手にそろばんを持っていれば完璧だと、ミチルの転入時の挨拶で思ったことを思い出した。
「関西弁は関西人の心。関西人の魂は売らへん! ウチは関西人や!」
そう宣言していたが、転入して2年近くが過ぎ、かなり売り飛ばしているようだ。
不思議とミチルと美琴は波長が合い、彼女が転入してきてすぐに2人は友達になった。美琴にとってミチルは、居心地のいい雰囲気を与えてくれる希有な存在だった。
「悪いけど、今日はうちの神社で、バイトのギャラアップ交渉をするの」
「ああ、そっか。そろそろ巫女さんのシーズンやったねぇ。忘れてたわ」
「……とっておきの情報を貰ったから、1食おごりたいんだけどね」
髪を指ですきながら、美琴は首を振った。
「……なんや。とっておきの情報やのに、マクドで手を打つ気やったんかいな」
「ホントの情報で、ホントに上手く言ったら、好きなだけ食べさせて上げるわよ。……食べ放題の店だったらだけど」
「ケチくさぁ。もしかしたら一生が変わるかもしれん情報やでぇ?」
鞄を手に持ち、ミチルはこれ見よがしにため息をついた。
「ま、ええわ。はよミコやんの家に行こうや。ウチにも関係あることやさかい」
人差し指でメガネをいじるミチル。レンズが光をきらりと反射する。
「ミチル、今年もあたしんちのバイト、手伝ってくれるんだ!」
「もちろんや。また一緒に巫女さんになって、霊験あらたかに年を越そうや」
「よろしくっ! ……ホントは、春也君と一緒に年を超したいんだけどなぁ」
ばぁん!!
「やったぁ! これで誰にはばかることなく冬休みよぅ!」
終業式のホームルームが終わった瞬間、軽井沢美琴は力一杯机を叩いた。
その勢いで艶やかなロングヘアが揺れ、少し上気した白いほおを何度も撫でる。
「あー、この開放感を感じるたび、私は学生なんだなーって思うのよねぇ」
ぐるんと頭を回し、美琴は帰り支度を始めたクラスメイトたちを見た。みんな一様にうきうきしながら、雑談に花を咲かせている。
そんな美琴の視線に気づき、親友のミチルが近づいてきた。
「ミコやん、どう? マクドでも行かへん?」
かなり関東のイントネーションが混じった関西弁で、ミチルが話しかけてくる。
三つ編みに分厚いメガネという出で立ちは、美琴がイメージしている関西人に近い。あと手にそろばんを持っていれば完璧だと、ミチルの転入時の挨拶で思ったことを思い出した。
「関西弁は関西人の心。関西人の魂は売らへん! ウチは関西人や!」
そう宣言していたが、転入して2年近くが過ぎ、かなり売り飛ばしているようだ。
不思議とミチルと美琴は波長が合い、彼女が転入してきてすぐに2人は友達になった。美琴にとってミチルは、居心地のいい雰囲気を与えてくれる希有な存在だった。
「悪いけど、今日はうちの神社で、バイトのギャラアップ交渉をするの」
「ああ、そっか。そろそろ巫女さんのシーズンやったねぇ。忘れてたわ」
「……とっておきの情報を貰ったから、1食おごりたいんだけどね」
髪を指ですきながら、美琴は首を振った。
「……なんや。とっておきの情報やのに、マクドで手を打つ気やったんかいな」
「ホントの情報で、ホントに上手く言ったら、好きなだけ食べさせて上げるわよ。……食べ放題の店だったらだけど」
「ケチくさぁ。もしかしたら一生が変わるかもしれん情報やでぇ?」
鞄を手に持ち、ミチルはこれ見よがしにため息をついた。
「ま、ええわ。はよミコやんの家に行こうや。ウチにも関係あることやさかい」
人差し指でメガネをいじるミチル。レンズが光をきらりと反射する。
「ミチル、今年もあたしんちのバイト、手伝ってくれるんだ!」
「もちろんや。また一緒に巫女さんになって、霊験あらたかに年を越そうや」
「よろしくっ! ……ホントは、春也君と一緒に年を超したいんだけどなぁ」
作品名:【三題話】幸せは不幸を連れてやってくる 作家名:川嶋一洋