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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第六回】探し物はなんですか?

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「どこまで落ちるんだっちゃ?」
緊那羅がが長い髪飾りをを上に靡かせて京助に聞いた
「俺が知るか;ってかおま…いつの間に…」
京助が答える
「栄野弟がいるところまでに決まっているだろう」
いつの間にそこにいたのか京助の頭の上から迦楼羅の声がした
「鳥類?; おまえもいつの間に…;」
「話は後だ」
京助の言葉を途中で止めると迦楼羅が京助の頭から離れ京助の目の前にやってきた
「…悠はこの下にいるのか?」
京助が話を元に戻した
「下にいるか上にいるか何処にいるかはわからんがコレは絶対に栄野弟の所まで続いている」
迦楼羅が言った
「どうしてそんなことわかるんだっちゃ?」
緊那羅が迦楼羅に聞いた
「これは栄野弟の心だからな。暗いのは寂しさの表れだ」
迦楼羅が答えると京助はまだ終わりの見えない出口を見つめた

「どれだけ悠助が寂しかったか…わかる?」
「阿部…?」
そこに居たのは阿部
「大切なものをなくす…ということが悲しいことだというのはアタシも知ってる」
阿部がちらっと緊那羅を見て静かに言った
「アタシじゃ京助の代わりになれないってことも」
そして緊那羅の隣に並んだ
「早く行ってあげて」
微笑んだ阿部がすぅっと消えた
「…消え…だぁッ!?;」
阿部が消えたとほぼ同じに無重力が終わった
「大丈夫だっちゃ?」
思いっきり顎を強打して無言のままの京助に緊那羅が心配そうに声を掛けた
「…ってぇ;」
顎をさすりながら差し伸べられた緊那羅の手を掴んで立ち上がった京助が辺りを見渡した
「ここ…俺ン家じゃん…」
畳が敷き詰められた和室に積み上げられたダンボール箱目の前には室内灯の電気の紐がゆらゆらと揺れている

「とーさんっ俺も俺もー」
外からは子供の声が聞こえてきた
確か冬だったはずの外の景色は何故か緑がざわざわと風に鳴かされその風はついでに軒下に下げられた風鈴もチリリと鳴かせる
「…どうして…」
一歩後ろに下がった京助の足が何かを蹴った
【コロリンコロリン♪】という音がしたそれは赤ちゃん用の玩具でよく見る起き上がりこぼしだった
「…これ…」
京助がその起き上がりこぼしを持ち上げると【ころりん♪】と再び音がした
「とーさんてばっ!!」
風の入ってくる窓から風と一緒に入って来た子供の声に京助が顔を上げると周りには誰もいなくなっていた
「悠助ばっかりずっるいよー!!」
【悠助】という言葉に京助は急いで窓辺に駆け寄って身を乗り出して外を見た
「悠!」
京助は身を乗り出しながら悠助の名前を呼んだがそこに悠助の姿はなかった
悠助の代わりにそこにいたのは額に絆創膏を貼ってミ●キーマウスのTシャツを汚したまま着ている少年と後姿の男が一人そしてその男が両腕を上げると両手足をばたつかせて笑う赤ちゃんだった
「おーれーもー!!」
少年が地団駄を踏んで男を見上げ男の服を掴んでブンブン振っている
「こーら京助! あんたまた服汚してきて!」
青いワンピースを着た女性が少年の頭を小突いて男から赤ちゃんを受けとる
「…かあ…さん…?」
その女性は少し幼いが間違いなく母ハルミでその母ハルミが名前を呼んだということはその少年は間違いなく京助で母ハルミが抱いている赤ちゃんは悠助ということになるだろう
「じゃぁ…」
後ろ向きのまま母ハルミと会話している男
「…父さん…?」

母ハルミから悠助が生まれてからすぐに他界したと聞いていた父親のこと
計算したら7年は一緒にいたのに姿も声も全くといっていいほど覚えていない父親の面影
悠助より少し濃い目の髪を襟足だけ少し長めにした髪型
母ハルミより背が高く中年太りには程遠い体型
履いていたのは下駄
その足元にはコマとイヌが尻尾を振って男を見上げている
頭の上で風鈴が【チリリ】と鳴る
幼い京助が男に抱き上げられ高い高いをされて嬉しそうに笑っていた
そしてそれを見て優しく笑ったまま悠助をあやす母ハルミ

「……」
記憶にない父親の姿をどうして今こうして見てどうしてその男が父親だと思えるのか少し混乱しつつも京助は黙ったまま幸せそうな家族の図を見つめていた
「父さん…」
京助が小さく呟くと辺りが急に暗くなり何も見えなくなった

「な…」
突然のことに京助が慌てて周りを見渡すと歌が微かながら聞こえてきた
「この歌……この声…は…」
よくよく聞いているとその声は緊那羅の声だった
「緊那羅…」
京助が緊那羅の名前を呼ぶと目の前に緊那羅の代わりに黄金の玉があった
「…キンタマ…」
京助がボソッと呟く
「じゃない!!; 緊那羅ッ!!? どこいった緊那羅ッ!! いるんだろッ!?」
気を取り直して歌声の主を探す京助の耳に歌声に混じってふと聞こえた言葉

『ごめんな』

パァン!!
と音を立てて黄金の玉が砕けると途端に止んだ歌声と聞こえ始めた赤ちゃんの鳴き声
「ふぇえええ!!ふぇえええええ!!」
その声がだんだんと大きくなって