リミット―クリスマスの贈り物
アレッサの命
ホバークラフトが家の前に止まると俺は勢いよく外に飛び出した。
全速力で走って玄関まで到達する。
背後からブライアンも追い駆けてくるのが聞こえた。
俺はドアノブに指を押しつける。
するとドアノブの奥から青白いレーザーが放射され指紋の分析を始めた。
「頼む早く……早くしてくれ」
五秒ほど経って玄関のロックが解除された。
俺は玄関を勢いよく開けて中に飛び込みアレッサの寝室に向かった。
ドアを開けるとアレッサは相変わらず体中に点滴の針を付けベッドに横になっていた。
さらに彼女のベッドの横には幼馴染のヘレナが座っていた。
優しくアレッサの手を握っていてくれている。
俺に気付いたヘレナが俺の方に顔を向けた。
「トーマス!」
ヘレナは満面の笑みを浮かべながら俺に近づいて来た。
俺達は挨拶代わりの抱擁を交わす
それに気付き眠っていたアレッサもこちらに顔を向けた―良かった、アレッサは生きていたんだ!
「おかえり。兄さん」
アレッサが嬉しそうに笑った。
俺もそれに同じような笑みで答える。
「ただいまアレッサ」
俺は懐に手を入れながら思わせぶりな表情をアレッサに向けた。
「お利口にお留守番していたアレッサにクリスマス・プレゼントだ」
そう言って俺は薬を取り出して、高々と掲げた。
アレッサだけでなくヘレナも涙を流しながら歓声を上げた。
「ああ、兄さん素敵!」
俺を近くに引き寄せ、アレッサは全力で俺を抱きしめた。
俺も強く抱き返す。
もう大丈夫だよアレッサ。
俺はいつだってお前の味方だ。
「まったく、最高のクリスマスだぜ」
鼻をすすりながら背後でブライアンが呟いた。
作品名:リミット―クリスマスの贈り物 作家名:逢坂愛発