WHITE BOOK
一度想楽は腕を引っ込めた。
「なんだって?……何もないじゃないか。」
低い声の男性が言った。続いて高い声の男性。
「まさか、幽霊とかじゃないっすよね?」
「そんなわけないでしょ。」
すかさず女性が突っ込みを入れる。そして、続けた。
「コウジ、あんた行って見てきなさい。」
「えぇっ!?」
びっくりして大声をあげたのは、声の高いほうの男性。彼の名前――どちらかは分からないが、響き的にディアル名なのだろう――はコウジと言うようだ。
「まじっすかハルさん、まさか1人で行けってんじゃ……。」
ハルと呼ばれた女性が「当たり前じゃない」と即答する。
「あんた、幽霊と捕まるのと、どっちが嫌?」
「そ、そりゃ捕まるほうが嫌っすけど……。」
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ