WHITE BOOK
作戦を立て終えたところで、想楽は掃除用具入れの中から出てきた。
ここには窓がないのだが、水浸しだった床がところどころ乾いているのを見ると、だいぶ長い時間が経ったのが分かる。誰かが入ってきた形跡もなく、階下が騒がしくなったわけでもなさそうで、そうなれば覆面たちはまだエントランスホールにいるのだろう。
ついさっき魔法を使えるようになったかと思えば、もう実戦である。普通に考えるとおかしな話だ。
想楽は深呼吸して、なるべく静かにフェザーズを唱えた。本の後ろのほうからペン先が飛び出してくる。鮮やかな色をしたそれを本から引き抜くと、練習のときにエリカから教わった、白本術の理を思い返した。
(白本とペンさえその手に触れていて、呪文が合っていれば、本を開いてなくても白本術は発動する。詠唱と型式の間は空いていても大丈夫。なら――)
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ