WHITE BOOK
なんでこの学園の敷地はこんなに広いんだろう。
ほとんど毎日ここを歩いているとはいえ、門から高等部の玄関までのおよそ500mの距離は、いつまでも慣れないものである。
ようやく玄関前にたどり着いたところで、想楽の耳に自転車のベルの音が届いた。
後ろを振り向くと、想楽と同じ格好をしたショートカットの黒髪が、シルバーの自転車を立ちこぎしてこちらに迫ってくるのが見えた。
自転車は想楽の前でブレーキをかけ、砂埃を立ててぴたりと止まった。
「おはよー、想楽。」
自転車の彼女は手を軽く挙げて挨拶をした。
「おはよう、美姫(みひめ)。」
想楽も同じように挨拶をした。
美姫は、クラスは違うが想楽の親友である。編入して間もない頃からの付き合いなので、彼女とも1年と少し過ごしている。
想楽は胸ポケットの中の携帯電話を取り出し、サブウインドウから現在の時間を確認する。
「まぁ、他のみんなと比べたら断然遅いんだけどね。」
「まあねー。」
朝礼は8時半からのはずだが、想楽の携帯は9時20分を示していた。何を隠そう、彼女達は遅刻の常習犯なのだ。
携帯を再びポケットにおさめ、想楽は言った。
「じゃあ、次体育だから行くね。」
「うん、じゃあまたお昼に。」
2人は手を振って別れを告げ、それぞれ行くべき場所に向けて歩き始めた。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ