WHITE BOOK
時刻は12時35分。
午前の授業終了のチャイムを聞くと、想楽はかばんの中の教科書とノートを机の中に押し込み、残りを――あの白い本も――持って4階建ての校舎の階段を登り始めた。
想楽の所属する2年A組は、2階の一番奥の教室。そちら側にある階段は、校舎の屋上まで上がることができるのだ。鍵も簡単に開けられることを知っているので、想楽は毎日昼休みには、屋上で食事をとることにしている。
重い鉄製の扉を開けると、そこには先客がいた。
「来た来た。おーい!」
美姫だ。水色とピンクの包みをかばんから取り出しながら、笑顔で想楽に手を振っていた。
しっかりと扉を閉め、想楽が美姫のいる方へ歩み寄る。屋上の中でも一番景色がいいうえに、この時間は給水タンクが影を作ってくれるので紫外線を気にしなくていいために、2人はいつもこの同じ場所で待ち合わせるのだ。
想楽が美姫の右側に座ると、美姫は水色の方の包みを想楽に渡した。
「はい、今日のお昼ご飯。」
「いつも悪いね。」
「いいって。作るの楽しいし。」
早速包みを開くと、白地にクローバーが描かれた弁当箱が出てくる。
調理師志望の美姫は、毎日自分の弁当と一緒に想楽の弁当も作ってくるのだ。1人でワンルームに住んでいて、食事の2回に1回はコンビニで済ませてしまうほど悲惨な食生活をしている想楽が、今の健康な体を維持できているのは美姫のおかげと言ってもいい。
ふたを開けてみると、色とりどりの野菜を使ったサラダや赤いウインナー、マヨネーズを焼き込んだ卵焼き、塩ジャケや鶏の唐揚げといったおかず達が顔を出した。
想楽は合掌していただきますと美姫に微笑み、手作りの豪華な弁当に向き合った。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ