WHITE BOOK
火炎の当たったはずの的にも、その周りにも傷ひとつ付いていない。確かに陽炎の状態では感じなかった熱を感じたし、よろめくほどの反動はあったし、後ろでソアラが何を言ったか聞こえなかったほどの爆音がしたのに、だ。
思わず想楽は、白本に確認する。
「ねぇ、いまのちゃんと成功してたわけ?」
白本は青い矢印で答える。
《はい、問題ありません。純粋火炎には、生命を持たない物質を破壊する能力はありません。その上、視認出来ない炎でありますので、この結果は当然の結果と言えます。》
言葉を読み終え、後ろを振り向くと、ソアラが半ば放心状態で座っていた。想楽はペンを持っているほうの手で頭をかきながら言った。
「なんか――今のでいいんだって。」
口を半開きにしたまま、ソアラが頷いた。
「うん、すごかった。見えなかったんだけど、すごかったよ。」
想楽はその言葉を聞きながら、右手に感じたあの反動を思い出していた。
私、魔法を使ったんだ。
非現実に放り込まれたなら、普通は動揺するのかもしれない。
しかし想楽は、自ら非現実的存在になっても、むしろ感動しか感じていなかった。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ