WHITE BOOK
それはあまりにも机と同化していて、最初は目にも留めなかったものだ。ソファーテーブルの上に置かれるとむしろ存在感を放つそれには立派な彫刻が施されている。その中には、青い髪の少女が頭に天使の輪、背中には透きとおった翼――根元が青く、先にかけて緑になったグラデーションで、白本の羽ペンと同じ色のもの――をつけた状態で指を組んだお祈りのポーズをとっている小さな写真が収められている。
「簡単に言えば“天使”ってことかな。」
アランは彫刻の一部を指差す。凝ったデザインに隠れて読みにくいが、そこには「天使任命」という文字が読んでとれた。
そこで想楽は、ソアラの姿を脳内に思い浮かべる。その服装を写真の少女が着ている真っ白な法衣に変え、それから天使の輪と半透明の翼をつけてみた。そしてそのまま写真と同じポーズを取らせてみれば、当然写真の子とソアラがイコールで結ばれることになる。
「この写真は、いつのソアラなんですか?」
そうと分かれば、次の質問はもう一歩先に進んだところである。アランはええと、と少し考えてから、答えた。
「任命式の時のだから……3年前、かな。」
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ