WHITE BOOK
美姫の瞳が、脳が、心がこの出来事を記憶する。
今は目の前に倒れている男の指から雷の粒が解き放たれてから、
「ふぅー。」
少女のため息までの間を。
「これでもう大丈夫ですね。けがはないですか?」
今度は体ごと美姫を振り返る少女。
「あ、うん、大丈夫。ありがとう。」
ようやく声を発することができるほど落ち着きを取り戻した美姫は、ゆっくり立ち上がり、言った。
よくよく見ると、少女は美人と分類していいような、整った顔立ちをしている。表情は優しく、心から美姫を心配しているようだ。そんな顔で大丈夫かと聞かれたら、大丈夫じゃなくても痛みが消えていくような、そんな力があるようにも見える。癒し系とはこのような人のことを言うのだろう、と美姫は感じた。
「それならよかったです。」
少女はにっこりと微笑んだ。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ