WHITE BOOK
1秒にも満たない時間の後に、雷は美姫を襲うだろう。そしてその体をおおかた焼き尽くすに違いない。そうなれば生きてはいられないはずだ。
魔法で死ぬなら本望かもしれない。少なくとも通り魔に刺されるだとか、戦争に巻き込まれて相手兵士に拳銃で撃たれるだとかよりは幾分ましに思える。もちろん、その思考回路はファンタジーが好きだからこそだろうが。
ただ、まだ死にたくなんてない!
どのくらい考えただろうか。少なくとも1秒以上は経っているはずだ。
だが、いつまで経ってもその衝撃は訪れない。
もしかしたら魔法が失敗したのかとも考えたが、さすがにおかしいと美姫は感じた。
恐る恐る目を開いて、上目使いで正面を確認する。
そこにあったのは青いもの。徐々に視線を上げていくと、それがロングドレスであると分かる。さらに上に山吹色のケープ。そしてセミロングの金髪。前に伸ばした雪のように白い右腕。
美姫の前に立っていたのは、少女だった。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ