WHITE BOOK
当たり前だが、美姫はそんな名前を知らない。吸った息を一気に吐き出し、美姫は間抜けな声を出した。
「ちょ、ちょっと待ってよ。あたし、そんな名前じゃないし!」
なんだと、と言いたげな顔で男が見てくる。
「そんなわけないだろう!」
女が懐から1枚の写真を取り出し、男に続いた。
「そっくりだ。オマエがミルムだろう?」
その写真に写っているのは、金髪のセミロングで、顔の両側にみつあみを垂らした女の子。雪のように真っ白な肌と、海のように深い青の瞳。
「いやいやいや、全っ然違うし!髪の色から肌の色まで何もかも違う!」
確かに美姫の髪の色は、この森にいると気が付いた時には変わっていたが、金髪ではなく、「黄昏色の空」のセスナと同じ赤橙色だ。どこをどう間違えたら写真の女の子と同じになるのか、美姫には見当が付かない。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ