WHITE BOOK
考え事をしながら、森の中を走るもんじゃない、と美姫は後悔していた。
木の根につまづいて華麗なずっこけを披露してしまい、2人組に追い詰められてしまったことが主な原因である。
2人組のうち、触ると痛そうなほど尖った金髪の、目つきが悪い男が歩み寄る。
「どうした、もう終わりか?」
背中を嫌な汗が流れる感覚を感じながら、立ち上がることもできず、美姫は男を見上げた。
男の背後に立っている、頭から蝶のような触角が生えている茶髪のショートカットの女が言った。
「先輩、もしかしたらこいつじゃないっすか?」
「だろうぜ。」
美姫はなんとか平静を保とうと、大きく息を吸った。息を最大まで吸ったところで、男が螺旋模様で美姫を指差し、言った。
「悪いけど連れて帰らせてもらうぜ。抵抗しないでおとなしく捕まることだ、ミルム・リングル!」
「……はい?」
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ