WHITE BOOK
第6章:勘違(Misunderstanding)
美姫は走っていた。
ただひたすらに走っていた。
(もうっ、なんでいきなり鬼ごっこなんかしなくちゃいけないわけ?)
いや、走らざるを得ない状況に追い込まれていた、と言うべきか。
今から数分前。
美姫が目を覚ましたのは、深い森の中だった。
見渡す限り木と草と土の世界は、富士の樹海に誤って迷い込んでしまったかのような錯覚を覚えさせられる。ゲームの世界なら、たとえ迷いの森と名の付く場所でも地図を見ながら攻略できるが、どこだか知らない――異世界なら知る由もない――森の地図なんて持っているわけがない。
不安ではあったが、動かなければ何も始まらないと分かっていた。とにかく美姫は自分の方向感覚を信じて、ただひたすらまっすぐに歩いてみることにした。
しばらく歩いて出会ったのが、今美姫を追っている2人組だった。2人共色黒で、右手の人差し指には謎の黒い螺旋模様、ペアルックのつもりか、お揃いの革のチョーカーをつけている。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ