WHITE BOOK
そこには2人の男がいた。
ひとりは赤い髪を肩より下に伸ばした、白いシャツと青い半パンスタイル。もうひとりは薄紫色の髪を四方八方に散らした、淡い黄緑色のローブスタイル。赤髪のほうは肌が白いので、こちらはディアルだろう。紫髪のほうはこちらに背を向けているため分からない。
「――こりゃあ、ここから見ても喧嘩って……でも、これって喧嘩で済むレベルなのかな。」
グラウンドは、とんでもなく使いにくそうな状態になっていた。ところどころえぐれたような穴が開いていたり、大きな氷の塊が転がっていれば当然だろう。
明らかに穏やかとはいえない2人の間の空気は、遠くから見ている想楽にも伝わるほどだった。
そこに、青いマントを身に着けたソアラと、コックコートを脱いで赤いパーカーを着たアランが走り寄るのが見えた。
想楽がそれを確認できたその時、赤髪と紫髪がほぼ同時に、それぞれの右手を振り上げた。紫髪の手はしっかりと日焼けした小麦色。螺旋模様が見えるわけではないが、こちらはフィアルのようだ。一方でアランは、ソアラに右手を向けている。ソアラも走りながら右手を空にかざしていた。
遠くから見ているうえ、予備知識がソアラとの会話しかない想楽は、その右手の動きを不思議がることしかできない。
(ソアラ達のあの螺旋模様とか、ディアルに付いているっていうオーブに何か……)
そう考え始めた、その時だった。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ