WHITE BOOK
「紹介するね、あたしのお兄ちゃん。フィアル名もディアル名もアランって言うんだ。」
「アラン・リクルーネです。よろしく。」
想楽はどちらの名前を名乗ればいいか考えた。そして、せっかくなので新しい名前を使うことにする。
「あ、えーと、エアル・チェリーです。」
改めて名乗ると、まるで自分が他人の名前を借りているかのような、不思議な気分になった。
「うちはね、ベーカリーをやってるんだ。パパとママとお兄ちゃんが交代でパンを焼いてる。あたしは客寄せしかしてないんだけどね。」
ソアラの言葉で、あの冷蔵庫とオーブンのあった空間の意味を理解することとなった。
「さあ、温かいうちにお召し上がりください。」
アランに促され、2人はいただきますの声をそろえ、思い思いにパンを手に取った。やわらかく温かいそれは、やはり先程焼きあがったものだったようだ。
ソアラの真似をして、想楽は思い切りパンにかぶりついた。
「……ん?」
歯茎にあたる、パンらしからぬ食感に、想楽は疑問符を出した。
見てみると、パンの中に具材が入っていた。クリームパンやジャムパンであるかのように、空洞に肉まんの具の野菜多めバージョンのようなものが詰められていた。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ