WHITE BOOK
「おそらく、クフィリアの言葉が発表されてから、信者に伝わるのが早かったからだろうな。」
嵐が口を開いた。
「クフィリア教は何かの伝達ツールを使ったんでしょうか?私はセイラルに入るまで知らなかったんですけど。」
質問すると、ルームミラーの中で嵐が頷いた。
「クフィリア教は、と言うよりかはセイラルは、と言うのが正しいか。セイラルの電子情報技術は世界一なんだ。アリスの話によると、クフィリアの言葉は映像放送で一斉に発表されたらしい。印刷で配られたファルシア教より広まるのが早いのは仕方ないだろうな。」
「想楽お姉ちゃんの世界にもテレビってあるのかな?映像放送ってテレビのことなんだって。」
前から思ってはいたことだが、epochにおける電気の技術は、明国に遠く及んでいない。epochよりは進んだ技術のある世界出身のりぼんでも、携帯電話は知らなかった。epochでは固定電話が家庭にあることすら珍しく、企業に向けて電話をかけるための店があるとのことだった。
「想楽さんの世界は電子技術がすごく発達しているそうですね。一度行ってみたいものです。」
嵐の隣に座る頼斗が、そう言って笑う。
「きっと驚くと思うよ。いろんな意味で。」
epochにあって当たり前のマテリアルがないんだからね。
想楽は心の中でそう付け足して答えた。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ