WHITE BOOK
「うん、まぁいいんだけどさ。」
アリスが軽く流してくれたことにより、次は全員がセイファーに注目する。
「想楽が意味不明なこと言ってくれたおかげで、セイファーのパニックも収まったみたいだし。とりあえず、その帽子はなんじゃらほい?」
正確には、その手に握られている赤い帽子に。
「なんかセイファーさんのっぽくない色してるけど。」
「これは……。」
少し戸惑った顔をして、セイファーが話し始める。今度はきちんと理解できる言葉だ。
「これは、ぼくの親友から預かった帽子です。何か役に立つかもしれないからって、この世界に来る時に持たせてくれました。」
そして大切そうに帽子を抱きしめる。よほど仲のいい親友なのだろう。その親友は、美姫が自転車の鍵を言付けたときと同じ気持ちで、セイファーに帽子を渡したのかも知れない。
想楽は、夢のようだったあの草原を見る前に気付いたことを話そうと思い、口を開いた。
「それが、『せいふぁーのあかのぼうし』……美姫の暗号にあったものかもしれないね。」
「へ?」
間の抜けた顔をして、アリスがぽかんと口を開ける。
「暗号……そんなんあった?」
どうやら、嵐がチョーカーを持っている事実を知り、暗号の後半が完全に頭から抜け落ちているらしい。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ