WHITE BOOK
「あぁ、アリスの意訳が書いてない、この部分か。」
訳文を持った嵐が、アリスに指し示す。
「……そういや手付かずだったね。」
「でも不思議ですねぇ。美姫さんにはこの帽子を見せてないはずですけど。」
「それに、美姫さんは嵐さんに会ったことないはずなのに、何で名前知ってたり、チョーカー持ってるの知ってたりしたんだろう?」
そう考えると、美姫のこの手紙には謎が多い。それを理解する鍵となるのが、前後の文――『みひめのゆめ』と『くろのほしのちから』だろう。
原文をもう一度セイファーに照らしてもらう。緑色の文字――セイファーによると、美姫の響きの色――が再び映し出された。
「『こころのいとのはさみ』っていうのが、たぶんエリザの暗示を断ち切れるもの……だと思うんだけど。だから、後ろの3行のどれか――もしかしたら全部かも知れない。それを使えば、エリザの暗示を解けるってことなのかな。」
「暗示が解けるのか?」
驚いた嵐が聞いてくる。現在進行形で暗示にかかっているのだから、解けるものなら解きたいのだろう。
「美姫に聞かないと本当の意味は分からないけど、解読したとおりなら、間違いないと思います。」
「よかったね、らんにぃ。」
「あぁ。」
嵐と美羅乃の表情に、本当の意味での笑顔が浮かんだ。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ