WHITE BOOK
「“ラン”ワン、ドドコボジム、ナニイョグクセウダ?」
セイファーは気付いていないのか、嵐にそのまま謎の言葉で話しかける。当然嵐は分かっておらず、頭上に疑問符を並べている。それでもなお、セイファーは古代語で続ける。
「ゴプヒア“セイトゥン”ワンキバニパドドコヲニザウピダカアサビタゲンデヨ……ゴプヒセジツドロマサベラ、ジョグビョプギタウソ。」
周りにお構いなしに飛び交う山吹色の響き。涙声のセイファーの手には、いつの間にか赤い帽子が握られていた。少し暗い色をした野球帽で、明らかにセイファーには似合いそうもないので、おそらくは誰かから譲り受けたのだろう。
それを見て、想楽ははっとする。
(あれ……セイファーの、赤、帽子?)
結局最後まで訳されていない美姫の暗号の後半に、そんな文があった。
(じゃあ、あれが『こころのいとのはさみ』……エリザの暗示を断ち切れるもの?)
その帽子の周りに、セイファーの響きとも美姫の文字色とも違う水色の光があったことに、想楽は気付いていなかった。
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ