WHITE BOOK
「それ、さっき渡されたものですよね。」
まだ動き始めていない車の運転席から、頼斗が振り向いて尋ねる。助手席のセイファーも、右隣に座るりぼんも想楽の手の中に注目した。
それは小さな鍵。美姫の両親が手がけたRPG「黄昏色の空」の主人公エアルの杖をかたどったキーホルダーが付けられている。
「美姫の……自転車の鍵?」
そこで、キーリングの部分に折りたたんだ紙が結び付けられているのに気付く。外して開いてみると、そこにはソアラのものに良く似た字が並んでいた。どうやら、本当に渡したかったのはこの紙らしい。雨に濡れて少し字が滲んでいたが、読めなくもなさそうだ。
“想楽へ。あたしは今のところ大丈夫。セイファーからもらった力を使って、なんとか脱出できないかがんばってるところだよ。クフィスが言うには、みるむちゃんの加工?が18日から始まるみたい。こっちから何か出来ないか、考えてまた連絡するね。美姫”
作品名:WHITE BOOK 作家名:アリス・スターズ